女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、出生地・スウェーデンのことなどを写真と文章でつづります。今回は「グリーフケア」について。落語家の桂雀々さん、音楽プロデューサーの大塚ガリバーさん…大切な人たちとの一生の別れへの気持ちを率直に語ります。志村けんさんや上島竜兵さん、山城新伍さんとの思い出も。

猫とフィーカ
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フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと

大切な人を失う悲しみと、どう向き合うのか

川上麻衣子さん
川上麻衣子さんが語る、大切な人の死への率直な思いとは…

専門家の講義を受けて、学びを得る喜びを死ぬまでにあといくつ体験できるだろうか。最近はどんな事柄であってもついつい、あと何回、などと逆算するくせがついています。

私が運営をしてる千駄木にある「まいの間」というイベントスペースでも、学びをテーマにしたセミナーをいくつか開催しています。最近では「グリーフケア」についての学びが私の心に静かに響いています。

●グリーフケアとは?

猫と30代の川上麻衣子さん
30代の頃の川上さんと飼い猫。これまで、5匹看取って今2匹と暮らす

グリーフというまだ耳慣れないこの言葉は「大切な人や身近な存在を失った際に生じる悲嘆」を意味しているそうです。グリーフケアはそんな悲嘆を抱えた人々を支援するケアのこと。

今回の講義では、主にペットロスに視点を当て、愛猫を失った悲しみとどう向き合い、受け入れていくのか。その過程に起こりうるさまざまな心理的変化について学びました。改めて「命」を考える大きなきっかけとなっています。

大塚ガリバーさん、桂雀々さんへの想い

2024年はじつは私にとって大切な友人たちが、若くして星になってしまった寂しい年でもありました。

音楽プロデューサーの大塚ガリバーさんと川上麻衣子さん
音楽プロデューサーの大塚ガリバーさんと

10代の頃「青が散る」という番組で共演したことがきっかけとなり、それ以来、思春期・青春時代と、不安定に揺れ動いていた私をいつも支えてくれた大塚ガリバーが闘病の末に亡くなったのが今年の2月。

そして11月に、この数年は週に1度は下町で一献を交わすほど家族のような存在だった、落語家の桂雀々さん。

●早すぎる、友との永遠の別れに戸惑いを隠せず…

落語家の桂雀々さんと川上麻衣子さん
落語家の桂雀々さんと

生きることへのエネルギーに満ちあふれ、常に笑顔と元気をたくさん振りまいてくれる存在だっただけに、突然目の前の道が崩れ落ちて、身動き取れなくなったような不思議な感覚に陥りました。

ともにまだ60代の早すぎる別れです。

「友の死」を受け入れることは容易ではありません。彼らがいた時間と、いなくなってしまったこれからの時間。どのように気持ちをきり替えて生きていけばよいのか、途方に暮れてしまいます。

コロナ禍には志村けんさん、上島竜兵さんとの別れも

コロナ禍に、長年親交のあった志村けんさんとの別れがあり、上島竜兵さんとの別れもありました。その事実を、もしかすると私は受け止められていなかったのかもしれません。いつの間にか、自己防衛が働き知らず知らず感情を呼び覚まさないように、自らがコントロールしたのでしょうか。

そんな私の心を今、雀々さんが思いきり叩いてくれているような、そんな心境にいます。

「悲しいときはしっかりと悲しみと向き合い、泣けるときは泣きなさい」。そうはっぱをかけられています。私の中に蘇る、向こうへと旅立った人たちの顔は皆、清々しい笑顔です。