急速に気温が下がっていくこの季節。「病院に行くほどではないけれど、なんだか調子が悪い」という人も少なくありません。そんな人には東洋医学の考え方をベースにした「食養生」がおすすめ。そこで、この秋の食養生のポイントについて、漢方薬局・CoCo美漢方で多く人の健康相談にのっている国際中医師の田中友也さんに教えてもらいました。
すべての画像を見る(全6枚)東洋医学の考えを少し知って「食養生」にトライ
「養生」というのは、東洋医学(漢方)において“身体をいたわること”をいいます。そのなかで、食事によって身体のバランスを内側から整えるのが「食養生」です。
「食養生というと難しそうに感じるかもしれませんが、特別な食材や薬を用意する必要はありません。季節ごとに旬のものを食べたり、体調に合ったものを選んで食べたり、少し意識して毎日の食事をとるだけいいんです。それだけで身体が変化していきますよ」(田中友也さん・以下同)
「五臓」「五味」で身体と食材の関係を知る
食養生を実践するうえで知っておきたいのは、「五臓」「五味」「五性」という考え方。まず、東洋医学の基本となっているのは“人間の身体も自然の一部”という考え方。そして、自然界のすべての物事は「木・火・土・金・水」の5つの要素で成り立っていると考えられています。
身体の機能は「肝・心・脾・肺・腎」の「五臓」、食材に備わる力は「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(かんみ=塩からい味)」の「五味」に分けられ、それぞれ上の図のように助け合ったり、抑制したりしていると考えられているのです。
「この5つの要素のバランスがとれているのが健康な状態。季節の変化や生活の乱れなどでバランスが崩れると体調も崩れます。そうならないように、弱い部分を食材の力で補おうというのが食養生です。ただし、ひとつ注意してほしいのは、五臓は西洋医学の臓器とは異なるということです。たとえば『肝』は、肝臓としての働きも含みますが、東洋医学では自律神経や血の貯蔵にかかわる臓腑のことを指します」
「五性」で身体を温める・冷ます力がわかる
食材には身体を温めたり冷やしたりする性質があります。その性質も上の図のように「寒性=身体を冷やす」「涼性=身体をおだやかに冷やす」「平性=身体を温めたり冷やしたりする性質がなく、ほかの性質を緩和する働きがある」「温性=身体を穏やかに温める」「熱性=身体をしっかり温める」の5つに分けられています。
「たとえば、冷え性の人は温性のショウガをとって身体を温める、ほてりやすい人は寒性のナスをとって身体の熱を冷ますというふうに、季節や自分の体調に合った食材を取り入れてみると身体が整ってきますよ」