日本人の女性がかかるがんでもっとも多いといわれる乳がん。「乳房を失いたくない。罹患したくない」という人も少なくないのでは? そこで今回は、がん研有明病院乳腺センター医長の片岡明美先生に乳がんを予防するために知っておきたい3つのポイントを教えてもらいました。
すべての画像を見る(全4枚)知っておきたい乳がんの発症リスクとメカニズム
罹患しないに越したことはありませんが、そこで気になるのが「乳がんの発症リスク」。リスク要因といわれるものについて、その理由とメカニズムを知っておくことが大切です。
●Q:女性ホルモンと乳がんの関係を教えてください
A:エストロゲンが分泌される機会が多いほどリスクが高まります
乳がんは、乳房の「乳腺」という組織で発症します。乳腺細胞は女性ホルモンの一種であるエストロゲンの刺激を受けて増えますが、その刺激が多いほど遺伝子変異がたまっていき、がん化につながります。
エストロゲンは月経周期に合わせて卵巣から分泌されるため、初潮が早い、閉経が遅い、出産経験がない、といった人ほどリスクが高まるというわけ。なお、出産・授乳をすると蓄積された遺伝子変異がリセットされ乳腺細胞が安定します。そのため出産経験のない女性が増えている国では、閉経前の乳がん患者も増加する傾向にあります。
●Q:太っていると乳がんになりやすいって本当?
A:皮下脂肪がたまりやすくなる閉経後の肥満は要注意
すでにお話したように、乳がんの発症リスクは、エストロゲンにさらされる機会が多いほど高まります。
この点から、閉経後の肥満はとくに注意が必要。閉経後、卵巣からのエストロゲンの分泌量が減ると、今度は皮下脂肪からエストロゲンがつくられるようになるためです。できるだけ太らないよう心がけましょう。
●Q:運動習慣がないと発症リスクは上がりますか?
A:運動習慣がある人はがんになりにくいといえます
運動量が多い=活発な人は、リスクが低くなるので、定期的に運動するようにしましょう。強度は高くなくてもいいので、1日20分以上の有酸素運動を継続的に行うのがおすすめです。
とくに閉経後は筋肉も代謝も衰えてくるうえ皮下脂肪がたまりやすくなるので、できるだけ長い距離を歩く、駅では階段を使うなど、意識して動くようにしましょう。
●Q:親せきに乳がん罹患経験者がいます。発症リスクを調べる検査などはある?
A:罹患経験者は保険診療、未罹患者は自由診療で受けられます
2、3回乳がん罹患経験のある人は保険診療で遺伝子検査を受けられます。ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが受けたことで話題になりましたね。結果が陽性になったら、年齢ごとの乳がんと卵巣がんのリスクがわかるので、目安にはなります。
罹患したことがない場合でも、自由診療(40~50万円程度)で調べられます。