日々、家事に追われると「何かをやめる」「手離す」という取捨選択をしていきます。
暮らしまわりを中心に取材をしているフリーライターの一田憲子さんご自身は、50歳を過ぎて、欠点を直そうともがくことをやめ、さらに、生活面でもそれまで続けていた家事の一部を少しずつやめるようになったといいます。
そこに至るまでは、ご自身の中でも葛藤があったと打ち明けます。50歳の一田さんの暮らしにおける「やめること」についてのお考えを聞いてきました。
自分の足でたどりつく「やめてもいいこと」
すべての画像を見る(全5枚)●じつはムダづかいは大事。痛みがあるからこそ本当に自分に合う暮らしがわかる
「私は今でこそ、掃除はコードレス掃除機を活用していますが、この掃除機を買うまで長い間葛藤していました。コードレスの利便性にひかれながらも、『まだ使える掃除機を持っているのに、お金を使ってもいいものか』と。だけどある日、洗面所に髪の毛が大量に落ちていたのを見て、『ここにコードレスがあったらどんなにラクか!』と思い、その髪の毛を吸い取るために購入を決意できたんです。むしろ、悩み続けたあとでないと、気持ちが固まらなかったでしょう」
一田さんによると、ここに至るまでは決してムダ遣いではなく、「大事なプロセスだ」と言いきります。
「私は若い頃、洋服を買うより器を買うことに情熱を傾けていました。それだけに、器に関しては迷わず選べますが、洋服に関してはまだまだ迷いがあります。実際、今でもいろんなところにお金を落としては失敗し、後悔の連続(笑)。でも、この先には、器のときのように、私なりの『答え』が見えてくるはず。結局、『買ったけど結局使わなかった。大失敗!』という痛みが、次にものを選ぶときの指針になります。つまり、失敗がないと、次のステップに上がれないんです」
●長い時間をかけて、私がきっぱりとやめたこと
買い物だけにとどまらず、家のこともあれこれと実践を重ねて、自分に合う合わないがだんだんとわかってくると言います。一田さんが長年かけて、「これはやめた!」ときっぱり決めたことの一部を紹介します。
1.掃除は完璧を目指さない現在、家の掃除はもっぱら、マキタのコードレス掃除機を愛用。ゴミに気づいたらすぐに取り出せ、さっとかけられます。
「掃除は100点満点を目指すのをやめました。今は、『80点の掃除を毎日続けられればいい』と思っています」
2.使ったことがない調味料を買わない初めて挑戦する料理のレシピには、使ったことがない調味料が書かれていることが多いもの。その都度、調味料を買いたしていった一田さんですが、年末の大掃除で、数回しか使っていないのに賞味期限ぎれになっているのを見て、新たに調味料を買うのをやめました。
「レシピにある調味料で、家にないなら代用できそうなものを使います。今常備しているのは、ガラムマサラ、花椒、クラミシード。そして、中華系の3種です」
3.トイレブラシは使わないトイレのブラシは、使った後にトイレの隅に置いておくと、雑菌も増えるし見た目もイマイチ。そこで思い切って、ブラシを処分。
「マイクロファイバーのふきんで毎日便器を磨けば汚れもたまらず、ブラシも不要になったんです」
4.靴みがきはやらない一田さんは革製のレースアップシューズが大好き。でも、革靴はマメにみがこうと思ってもどうにも続きません。そこで一田さんは履く前に汚れに気づいたらさっとブラシをかける程度にしています。靴のお手入れも100点満点を目指すのはしんどいから。
「その代わり、かかとがすり減った時にはすぐにお直しに出します」と、できることはやるスタンスです。
●安心して。時間とともに「これはやめたい」ってわかるようになる
最後に、一田さんはESSE読者にこうエールを送ってくれました。
「なにかをやめられるときって、木の実が熟してポトッと落ちるように、自分のなかで『あー、もうやめよう!』と思えます。ここに行きつくには、自分なりに考えて試行錯誤するプロセスを経ないと、難しい。だから、人に『こういうのはやめたほうがいいよ』って言われても、自分には合わなければ、やめることも難しくなる。だから落ち込む必要なんてないんです。
だんだん年を取ると、ジタバタする体力も気力もなくなっていきます。あれでもないこれでもないと悩んで寄り道したり失敗したりできるのは、若い頃の特権ですよ」
ジタバタする時期こそ、未来の自分を培っていくためのかけがいのない時間。一田さんの考えを取り入れることで、少し肩の荷が下りるのではないでしょうか。
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