抗がん剤治療で産後は口内炎、膀胱炎に

ミルクを飲む女性
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産後に苦労したこととしては、口内炎、膀胱炎になりやすかったことだそう。

「抗がん剤など化学療法には腎毒性が強いものもあり、妊娠によって腎機能が悪化することも知られていますが、私の場合も、再発したときに使った抗がん剤で腎機能(クレアチニン)が高くなり、さらに妊娠中は抗体と免疫の数値が下がったため、度々膀胱炎や口内炎を発症しており、細心の注意が必要でした。抗体を上げる点滴を打つために、産後すぐに母乳は薬で止めてもらい、完全ミルクでの育児を選択しました」(宮子さん)

現在でも、定期的に血液内科に通い検査を受け続けているという宮子さん。

「完全ミルク育児は『だれでも授乳ができる』という利点もあり、実家の両親や夫の協力を得て、体を休めることができます。遠慮しそうになることはありますが、心から感謝をしつつ協力をしてもらうことで、結果的に健康状態もよくなり、長い目で見て家族の幸せにつながると思っています」(宮子さん)

がん治療と妊娠について医師が詳しく解説

ローズレディースクリニック院長・石塚文平先生に答えていただきました。

●宮子さんは42歳と一般的な更年期年齢ではありませんが、排卵はなかったそう。がん治療により早めに閉経になることはある?

「抗がん治療における抗がん剤や放射線療法は、がん細胞の増殖を抑制する一方で、卵巣や卵子などの卵巣組織にダメージを与えます。治療後によって生理が停止して排卵が起こらず、妊孕性が低下して妊娠が難しくなる可能性があります」(石塚先生、以下全て)

●宮子さんはどのような妊孕性温存療法を行ったのでしょうか?

通常、妊孕性を温存する為には、卵巣機能が正常に保たれている間に卵巣を刺激し、採卵で採れた卵子を凍結保存します。

がん治療を開始すると卵巣機能が低下することがある為、がん治療を開始する前に行います。ただし、がん治療後の卵巣への影響は個人差があり、治療後でも卵子を凍結することが可能な場合もあります。

宮子さんは、初回のがん治療後に卵巣機能が著しく低下しましたが、その後2年程ローズクリニックの方法を用いて、時間をかけて少しずつ合計7個の卵子を凍結保存することができました。その後、再発され再度がん治療を受けた後、卵子は育たない状態でした。

2度のがん治療を懸命に乗り越えられた後に、凍結していた卵子を用いて妊娠が叶いました。

●がんと診断された若年女性が妊孕性温存を望んだ場合に、事前に知っておくとよいことはありますか?

主治医と相談した上で、「東京都若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業」の指定医療機関を受診することがお勧めします。主治医に相談しにくい場合は、がん相談支援センターを利用することも可能です。