古いところには極力触らずにリノベーション
すべての画像を見る(全17枚)オフィススペース上部の本棚の大量の本は、街並みを残すために必要な資料だそう。「大学時代は、設計ではなく古い建物を研究。ちょっとマニアックなんです」と中村さん。「マニアックですけど、主流になりつつありますよね」と田中さん。
中村:この建物は耐震補強が必要だったので、カフェのキッチン背後の壁と反対側の壁はすべて補強。オフィス側は、各ブースの壁を耐震補強壁としています。既存の柱に梁を加えて、くたびれた架構を内側から強くしているイメージです。
田中:構造をうまく空間に生かしているのも興味深いです。
中村:浴室側の床は排水のために斜めになっていて、それだと斜めのまま仕事をしなければいけないので(笑)、床を張って配線などを床下に通しています。
田中:壁の富士山の絵もいいですよね。ちょっとはがれてきていますけど。
中村:塗り替えるかどうか悩みましたが、東京でいちばん多くペンキ絵を描いた早川さんという絵師が描いたものなので、そのまま残したいなと。耐震壁などの新しいものは入れるけれど、古いものは触らないことを意識しました。こういうことをやっていたら、リノベーションの依頼が来るようになって、東京でもふるさとの山形県新庄市でも、古い建物を改修して街に生かす活動をしています。住宅もやりますが、店舗だといろんな人が体験できるので、自分もやってみたいという人も出てきて連鎖していくんです。
田中:そうやって街に活力が出てくるといいですよね。
銭湯ならではの大空間を生かしつつ、内側につくった木の軸組みで耐震補強。塗装をはがしたことで現れたという壁も印象的です。
洗い場で実際に使われていたイスをしみじみ眺める田中さん。浴槽のタイルも味があります。
オフィスの中央に配されたワークスペースで、快哉湯と中村さんとの関わりからリノベーションに至るまでの流れについて、スライドを見ながら説明を受ける田中さん。「耐震の仕組みもよくわかって、おもしろかったです。街の人たちも、この銭湯に思い入れがあるのが伝わってきました」。
●取材協力
・レボン快哉湯:東京都台東区下谷2-17-11 営業時間:10:00 ~18:00 不定休(詳細はSNSで確認を)
・ヤマムラ建物再生室:山形本社 山形県新庄市大字福田711-6