やってきたリモート会議の日。お面をつけたところ…

ほどなくして、リモート会議の日がやってきました。エイミーさんはお面をつけるかどうか迷っていました。

「こんなお面をつけていたら怒られるんじゃないだろうか……?」

男が言っていた言葉を思い出し、意を決してお面をつけました。すると、不思議なことが起きました。

「あれ……だれにも指摘されない……?」

そう、会議の参加者はだれもエイミーさんのお面についてなにも言わないのです。そうとわかると、途端に勇気が湧いてきます。

「よし、このお面をつけていたら、人からの見られ方が気にならなくなって、自信を持って発言ができる!」

エイミーさんは会議でずばずばと発言しました。参加者の見る目はみるみるうちに変わりました。ついには、終わり際に部長からこんなことを言われました。

「きみのことを見直したよ。今度の大事なプレゼンをきみに頼みたいんだが」

「は、はい、まかせてください!」

「それじゃあ、頼んだよ。ああ、もちろんプレゼンはリモートじゃなくて対面だからね」

「……えっ?」

その返事が聞こえたのか聞こえなかったのか、部長の回線はすぐに切られました。

まもなくプレゼンの日はやってきました。

「き、きみ! ふざけているのかね!」

部長がエイミーさんの顔を見て、大声をあげました。エイミーさんがお面をつけていたからです。

「ど、どうしてもこれがないとだめなんです」

「大事な会議になにお面をつけているんだ。外しなさい!」

部長の手がお面を掴みました。しかし、お面は外れません。いくら引っ張っても顔から取れないのです。それどころか、皮膚を引き裂かれるような痛みが走ります。

「やめてください!」

エイミーさんは部長を突き飛ばすと、顔を隠して走り出しました。会社を飛び出すと、やがて雑居ビルへとやってきました。しかし、この前とは違い、蛍光灯は消えていて看板も見当たりません。

「なにもない……?」

息を整えながらドアに手を掛けます。ぐっと力を入れてゆっくりと開くと、中はもぬけの殻でした。部屋のなかは朽ち果てています。

「そんなバカな……」

もう一度お面に手をあてると、皮膚とお面の境目がなくなり、お面が顔そのものになっていました。

【編集部より】

リモート会議ではお面をつけろということでしょうか。そんな人がいたら、会議が始まった途端、参加者にツッコまれまくると思います。

リモート会議のアプリには、背景をぼかしたりフィルターをかけたりできます。視線が気になるなら参加者の顔を非表示にするなどもできると思うので、使い方をいろいろ調べてみるといいかもしれません。

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