料理人として店の厨房に立つ以外に、テレビや雑誌など幅広い仕事をこなす笠原将弘さん。5月29日には毎日の献立づくりに役立つ『笠原将弘の副菜の極み158』(扶桑社刊)が発売になり、すぐに重版に。料理などさまざまに活躍を続ける笠原さんのスペシャルインタビューを2回に渡りお届けします。
記事の初出は2023年6月。内容は取材時の状況です。
すべての画像を見る(全3枚)笠原将弘さんインタビュー。子育て、お弁当のこと
プライベートの時間があまりとれない中で、シングルファーザーとして3人のお子さんを育ててきた笠原さん。食を通した笠原家の子育て、この春まで続けてきたという息子さんのお弁当づくりやそのエピソード、毎日の献立の考え方などをたっぷりと伺いました。
●「人に迷惑をかけない」ことが笠原家のルール
――料理人として、父親として、どのようなスタンスでお子さんたちに食の話をしてきたのでしょうか? たとえば、好き嫌いがあったときには、なにか声かけをしていましたか?
笠原:自分も小さい頃は好き嫌いがいっぱいありましたが、大人になって食べられるようになったものもいっぱいあるし、成長するにつれて食の好みは変わるから、うるさく言ったり、無理に食べさせることはしませんでした。人間1つや2つ苦手なものがあったっていいと思っているので。ただ、声かけということで言えば、一緒にスーパーに行ったときに野菜や魚のコーナーをまわりながら、「今はこれが旬なんだよ」ということはマメに話をしていましたね。うちの親父も店の厨房で「春になるとタケノコがおいしくなるんだよ」というようなことをいつも話してくれたおかげで、僕も自然に食材の旬が頭に入ってきました。せっかく四季のある日本に生まれたので、そういうことは知っておいてほしいなと思い、意識して教えてきましたね。
――普段の暮らしの中で食材の旬について伝えていけば、自然に食に興味を持ってくれそうですね。ほかにも食育的なことはされていましたか?
笠原:わが家は僕の店が休みの日曜日によく食事に行くんですが、そこで食事のマナーについてはうるさく言ってきましたね。僕も親父に箸の持ち方から、食事中のトイレに行くタイミングまで、厳しく言われて育ちましたから。だから自分の子どもたちにも、周りのお客さんが不快になるほど大きな声で話さない、お店の人に声をかけるときはタイミングを見計らってとか、かなり細かいところまで言い聞かせました(笑)。これは食だけに限らないのですが、要は「人に迷惑をかけない」ということですね。でも、そうやってお店にとっていいお客さんになると、店側も誠意を込めて料理をしたくなるから、どちらにとってもいい関係が築けるんですよね。
●息子からのリクエストで毎日のお弁当づくりが日課に
――ところで、息子さんが高校生だった頃は毎朝お弁当づくりをされていたそうですね。それは、息子さんから「つくってほしい」とリクエストがあったのでしょうか?
笠原:息子の高校には学食もあって、「昼飯どうする?」と聞いたら、「弁当がいい」との返事だったので、それならとつくり始めました。親が子どもに直接なにかをしてあげるのも、これで最後になるかなという気持ちもありましたしね。じつは、僕の高校時代も料理人だった親父が毎朝弁当をつくってくれていたんです。彩りなんて二の次で、いつも茶色いおかずばかりでしたが、どれも本当においしくて今でもその味を懐かしく思い出します。そんなわけで、毎朝5時半に起きて弁当と朝食をつくるのが日課になりました。
――毎晩遅くまで仕事をして、5時半起きは大変ですよね。お弁当をつくるときに笠原さんの中でマイルールのようなものはあったのでしょうか?
笠原:まず、必ず入れると決めていたのが卵焼き。甘くてシンプルなのがうちの定番で、基本的にいつも同じ味です。そのほかに3品つくるのがいつものパターン。だいたい肉、魚、野菜を1品ずつという感じですね。育ち盛りの男子なので、とにかく肉をガツンと入れておけば満足みたいでしたね。