●電話の向こうから聞こえてきたのは…

「ダ……レ……ダ……」

受話器を落としそうになった。なにものかの声がする。まるで地の底から響いているような声だ。パニャーニャの身体は固まって動けなくなる。

「ウ……ゴ……ク……ナ……」

つぎの瞬間、通話がぷつんと切れた。そして、すぐ近くでがしゃんとガラスの割れる音が響く。驚いて音のほうを見ると、窓が開いてガラスが割れて床に散らばっている。強風で窓が開いたのだ。カーテンが風で揺れている。

パニャーニャはおそるおそる受話器から耳を離し、電話機に置いた。パニャーニャが呆然とその場に立ち尽くしていると、こんどはがんがんと玄関のドアが叩かれる。だれかがドアの向こうにいる!

あとずさりながら玄関から離れると、パニャーニャは意を決して駆け出した。そして、窓から飛び出す。この場から逃げるのだ。

「痛っ──!」

しまった。床に散らばった窓ガラスを踏み、足が切れてしまったのだ。走るたびに痛みが増していく。靴も履いていないのでなおさらだ。しかし、行くしかない!

「追ってきてる!?」

走りながら振り返る。すがたは見えない。だが、気配はある。足はもう限界だ。つんのめって前のめりに倒れる。地面に顔をぶつけ、口のなかに血の味が広がる。顔をあげ、四つん這いのまま振り返る。ああ、死者のすがたが──。

「ニ……ゲ……ル……ナ……」

終わった──。そう覚悟してパニャーニャは目をつむった。きっと自分は死霊の世界へと引きずり込まれるのだ。

しかし、しばらく目をつむっていたが、なにも起こらない。パニャーニャはゆっくりと目を開ける。眩しい光が目に入ってきた。日の出だ。

そこには美しい朝日だけが視界に広がっていた。呼吸を整えて立ち上がると、ふらふらと歩きながら家へと帰った。

その後、健康診断で体重を計ると、以前よりも数値が減っていた。

 

【編集部より】

必死に走ったら運動になるかもしれませんが、毎日そんなことになっていたら身体に悪いですよね。

なかなか習慣化するのは難しいですが、簡単な運動からすこしずつやってみることがオーソドックスな道です。ひとりじゃなくだれかといっしょにやるのもよさそうです。楽しんでやることが継続へのはじめの一歩になると思います。

 

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