少しずつ暖かくなってくる3月。「最近、夜中に何度も目が覚めてしまう」など、睡眠の不調に悩んでいる方がいるかもしれません。なぜなら、春は元々“睡眠の不調”が起きやすい季節なのです。漢方コンサルタント・櫻井大典さんの最新著書『食う寝る養生』(学研プラス刊)の中から、歳と共に増えてくる睡眠の悩みについて教えていただきました。

冬の大敵「冷え」に勝つ5つの生活習慣。自律神経を整え、免疫力アップ

寒さが厳しい冬、「冷え」による体の不調を抱えている方もいらっしゃるのでは? 今回は「冬の冷え・免疫力アップ」をテーマ…

春先の睡眠トラブルが多いのは、中医学的には「当たり前」

冬から春への季節の変わり目には、「いつもは普通に眠れるのに、なぜか寝つけない」「途中で何度も目が覚めてしまう」「夢をたくさん見て、起きたときにも疲れていて寝た気がしない」などの悩みを抱えている人が増えます。

櫻井さんによると、「漢方相談でもこの時期は睡眠についての相談が増えます。でもこれは、季節と体の関係を考えると当たり前の現象なので、焦らなくても大丈夫です」。なぜなのでしょうか。

「春は、気温の上昇とともに、体の中で熱をつくり出す“陽気”の働きが高まります。さらに、自律神経のバランスを司る部分の動きが活発になるので、ちょっとしたことで気分が上下しやすい季節なのです」(櫻井さん)

 

●1:行動も服装もゆる~く。早起きしてリズムを整える

不眠
春は眠れないお悩みが多い季節 ※写真はイメージです(以下同様)
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とくに日本は、春に入学、卒業、人事異動など大きな環境の変化が多く設定されています。自分のことでなくても、家族がそういった変化を迎えることもあるでしょう。
「“変化”すること自体ストレスになるので、この時期はどうしてもストレスが増え、不安やイライラが溜まりやすい季節です。体が気候や環境に慣れてくる頃には、いつも通り眠れるようになっていくので、仮に何回も目が覚めたとしてもあまり気にしすぎずに過ごしましょう。始まりのシーズンだからとがんばりすぎなくてOKです。考え方も行動も服装も、“ゆる~く”を心がけましょう」(櫻井さん)

また、季節によって太陽の昇る時間、沈む時間は違うので、体もその太陽のリズムに合わせた方が本来はラクなのだそうです。
「中国最古の医学書には、“春は夜更かしすることなく、朝は早く起きてゆるやかに庭を散歩するのがよい”と書かれています。夜更かしをすぐ改善するのが無理でも、可能なら遅く寝た日や“よく眠れなかったな”という日でも、ちょっとだけがんばって早めに起きてみましょう。そうすると夜も早めに眠気がやってくるようになり、睡眠のリズムも徐々に戻ってくると思います」ということです。
慌てて眠るためのサプリメントや薬などに頼る前に、まずは早く起きてみましょう。

 

●2:中医学では23時から3時の間に寝ていることが理想

布団

「眠るのが大好き。寝られるならいつまででも寝ていたい」という方、時々いらっしゃいますね。起きられないのではなく「寝たくてしょうがない」。でもそれはもしかしたら、慢性的に睡眠がたりていないのかもしれません。

「いくら好きといっても、人間の体は“半永久的に眠り続ける”ようにはつくられていないのです。仮に夜1時に寝て朝7時に起きているとしたら睡眠時間は6時間。もしあなたが7時間の睡眠を必要とする体であれば、毎日1時間の睡眠が不足した状態が続くのですから、いつも寝たいと感じて当然だと思います。流行りの言葉で言うなら、“睡眠負債”を抱えた状態です」(櫻井さん)

さらに、中医学では23時から3時の間に寝ていることが理想なのだそうです。
「理由は体の修復や臓腑の調整のため、また、体の各部署に必要な血液を蓄え、感情・思考などの活動にも大切な“血(けつ)”を蓄える、“肝(かん)”という臓腑が活発に働くのが、午前1~3時だからです」

ですから前述の人の場合は、理想の時間帯の半分しか寝られていないので、体の修復作業も完全にはできませんし、それが続いていくとメンタル面も不安定になりかねません。
「もしこの方が生活環境を大きく変えて、毎日22時には眠るという生活を2週間続けてみたら、おそらくいつまででも寝ていたいとは感じなくなるはずです」

 

●3:「週末に寝だめ」はNG。「10分でも早く寝よう」を合言葉に

眠い

そして、寝だめも同じだそう。
「週末にどんなに多く眠っても、平日の睡眠時間が4~5時間で、23時から3時の間に少ししか寝られていないのであれば、“寝だめしたから、毎日しっかり睡眠をとったのと同じ”にはならないのです。仮に週末に長時間眠っても、その時だけでは体の修復作業は完全には完了しません。昼まで眠り続けたせいで夜寝られなくなるなど、かえって睡眠のリズムを崩す可能性が高くなります」。

寝だめしたくなる睡眠状態であること、寝だめしないといけないほど睡眠がたりていないことが問題、というわけなのです。
「もちろん、疲れてどうしようもないと言う週末は、いつもより長時間寝てもいいですし、それで睡眠負債が多少は補えますが、だからと言って“寝だめしたから、平日は睡眠不足でも大丈夫”とは考えないこと。平日の睡眠をどう改善するか、を真剣に考えてみてください」

平日の睡眠をどうにかするために、おすすめの方法はありますか?
「“昨日より、10分早く寝よう”を合言葉にしてみましょう。私自身、23時に寝ついていることは多くはありません。ですから私もいつも、“10分でも早く寝ることが大事だぞ、俺”と自分に言い聞かせています」

「忙しいから」「このドラマの続きをどうしても見たいから」「子どもが寝た後でないと自分のことがきないから」など、早く寝られない理由はいろいろあるかもしれませんが、いつも疲れている、気持ちが不安定、などの自覚があるなら、昨日より10分でも早く寝に行きましょう。