●見知らぬ女の子と一緒に泣ける。それがパリ

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――東京は便利な都市ですが、その反面で機能的な部分がいきすぎてしまい、人と人との距離感が遠いと感じられてしまうところも。猫沢さんはパリを「ヒューマンな街」と捉えていますが、毎日のどんな瞬間に心を動かされるのでしょうか。

猫沢:今住んでいるカルチエ(界隈)は本当に小さいエリアで、日々そこで暮らしていると、大体の人の顔を覚えちゃうんですよね。『あ、あの人、今日は機嫌が悪そうだな』とか(笑)。

それから家の近所で週に4日、マルシェが開いていて新鮮な果物や野菜を買うことができます。買い物中に『ルバーブって、どうやって料理するの?』と聞けば、『10kg買って冷凍庫に入れておけば、一年中好きなときにルバーブのおいしいパイが焼けるわよ!』なんて、教えてもらえたり。食べ物は命をつくるものだから、買い物をする場所で小さな会話があると、心身共に元気がみなぎってきます。

また先ほどのパリのメトロでの体験談とも重なりますが、人としての感情の発露を、だれも抑えないところもいいですね。ハッピーなときはもちろん、悲しいときでも、そこが街中だろうがどこだろうがワーって泣いちゃう。すると必ずだれかが声をかけてくれる。もちろん、言いたくなかったら理由は言わなくていいんですよ。そうすると『セ・ラヴィ(直訳は「これが人生だから(仕方がない)」)』って、慰めてくれる。

私も、女の子がベンチで泣いているのを見かけたときに、『どうしたの?』って声をかけたことがあります。彼女は『なんでもないのよ~』と言っていってたけれども、人生いろいろあるよね、って一緒に泣いて。じゃあねって。そうやって人と人同士が自然に感情を揺らしていかれるところがパリ。私にとってはとても居心地がいいですし、呼吸がしやすいなと感じます。