近い将来の家づくりに影響してくるのが、2022年6月に交付された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律改正」です。改正により、建主自身が自分の住まいの省エネ基準適合義務を負うことに。今のうちにその中身を把握しておきましょう。東北芸術工科大学教授の三浦秀一さんに、ポイントを教えてもらいました。さらに省エネ基準を満たした家にするメリットも解説。

新築工事
これからは建主自身が自分の住まいの省エネ基準適合義務を負うことに
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すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務づけ

これまで300㎡未満の小規模建築物(住宅用途)の場合は、建築士に建主に対する省エネ基準についての説明義務を課していました。しかし、2022年6月に交付された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律改正」により、建主自身が自分の住まいの省エネ基準適合義務を負うようになります。

住宅の省エネ基準は「外皮平均熱貫流率」(UA値)と住宅全体で使用するエネルギー量の二面から評価され、日本全国を気候条件に応じた8つの地域に分けて、地域区分ごとに基準値が示されています(地域区分は一般財団法人住宅建築SDGs推進センターのサイトでご確認ください)。

 

●省エネ基準適合の義務づけの流れ

省エネ基準適合の義務づけの流れ

※建築確認のなかで、構造安全規制等の適合性審査と一体的に実施
※中小工務店や審査側の体制整備等に配慮して十分な準備期間を確保しつつ、2025年度までに施行する

 

省エネ基準適合を受けるには高断熱と省エネ機器の導入が大切

建主が適合義務を負うことになった住宅の省エネ基準には、外皮基準(外皮平均熱貫流率=UA値)と一次エネルギー消費量基準の2つがあります。

 

外皮性能を上げる工夫

前者は屋根や外壁、開口部などの断熱性能に関する基準で、断熱材の厚みや開口部の断熱性能など建築の手法で向上が可能なもの。

 

一次エネルギー消費量を抑える工夫

後者は空調や給湯、照明などに高効率の機器を用いることで消費エネルギーの削減を狙い、さらに太陽光発電の機器を装備してエネルギーを創出し、消費エネルギーとの相殺を図ります。

ちなみに一次エネルギーとは自然界から得た変換加工しないエネルギーのこと。ガス、電気、灯油など単位の異なるエネルギーをジュールで統一し、最も上流のエネルギー消費で比べることによって、公正な比較が可能となりました。