身の丈にあったコンパクトな家、暮らしを小さくするために狭い家を、あえて選択する人が増えています。この記事では、コンパクトな戸建てのメリット面について解説。教えてくれたのは、一級建築士の新井崇文さんです。コスト面、暮らしやすさなど、さまざまな角度から考えてみました。とくに子育てがひと段落したという世代は、ぜひ参考に。
すべての画像を見る(全11枚)「家が狭い」が強みになることも
家が広ければ「スペースに余裕があるので暮らしの変化に対応しやすい」「収納スペースを多くとれるのでものが増えても安心」といったメリットがあります。でも敷地や予算の関係で実現が難しいことも。
いったん考えをリセットして、コンパクトな家という選択肢も検討してみてはいかがでしょう。大きな家にあるメリットとはまた別のベクトルで、コンパクトな家にもメリットはたくさんあります。
筆者が考える、コスト面、暮らしやすさなど、コンパクトな家には、おもに以下のようなメリットがあります。
●コスト面のメリット
・イニシャルコスト(建設費など)が抑えられる
・ランニングコスト(光熱費など)が抑えられる
・メンテナンスコスト(修繕費など)が抑えられる
・土地代が抑えられる
●暮らしやすさのメリット
・掃除がラク
・移動がラク
・ものが増えにくい
●外部環境のメリット
・敷地の余白が多くなるので光や風を入れやすく、緑も配しやすい
・プライバシーを確保しやすく、採光や眺望を生かせる
※上記のメリットは、敷地条件やプランニングによっては受けられないこともあります
イニシャルコスト(建設費)が抑えられる
コンパクトな家のメリットとしてまずあげられるのは、イニシャルコスト(建設費)を抑えられること。コンパクトな家では屋根・外壁といった外装材や、床・壁・天井といった内装材の面積を小さく抑えられるので、それだけ建設費を抑えることができます。
昨今ではウッドショックや、その他世界情勢の変化を受けて、建設単価が年々高騰しています。そのため、建材の数量を抑えることによるコストメリットは、より大きくなる傾向に。
ランニングコスト(光熱費)が抑えられる
建築面積が小さいと、住み始めてからのランニングコストを抑えられます。コンパクトな家では空間の気積も小さくなりますので、冷暖房が効きやすく、光熱費も抑えられます(間取りによっては、少ない数のエアコンで温度が管理もできるでしょう)。
たとえば1年間の光熱費が数万円抑えられるだけでも、将来の20~30年間の積み重ねで数十万円~数百万円のコストメリットとなってきます。
ただし、プランニングによってはメリットを受けにくくなることも。吹き抜けや大きな開口を採用した場合などは、冷暖房の効果にロスが生じやすくなります。
メンテナンスコスト(修繕費)が抑えられる
将来にわたって必要となるメンテナンスコスト(修繕費)についてもメリットがあります。屋根・外壁といった外装材は、やがて再塗装などの修繕が必要になるもの。全面足場をともなう大掛かりな修繕工事となります。その際、屋根・外壁の面積が小さければ、その分コストを抑えることができます。
土地に関わる費用が抑えられる
土地から購入して家を建てる場合、コンパクトな家であれば敷地面積もコンパクトですむので、土地の購入費を抑えることができます。また、敷地面積や建物面積がコンパクトであれば毎年の固定資産税も下がります。
動線が短いと移動がラクで快適
コンパクトな家では動線が短くなり、移動がラクになります。キッチン・洗面・浴室といった水回りと各部屋の距離が近く、移動しやすいと、じつはとても快適。毎日することは、少しでもラクにできると、ストレスが減るものです。
加えて、家事もはかどりやすい住まいに。たとえば洗濯家事。洗ったり、干したり、しまったりが短い距離で完結すれば、手間が減ります。
コンパクトで部屋数が少なければ、掃除がラクに
子育て世代が家を建てる場合、「家族の人数が増えても困らないよう部屋数を多く確保したい」「ゲストルームや趣味の部屋なども設けたい」などと、広い家を望むケースもしばしば。でも、広い家では日々の掃除もそれなりに大変です。
さらに、子どもが巣立って家族の人数が減り、物置となった部屋が増え、掃除が行き届かなくなると、ホコリがたまりカビが生えやすくなるもの。不健康な住まいとなってしまいます。
一方、子育て時期でもなんとか快適に暮らせる範囲でコンパクトな家にしておけば、掃除がラクで暮らしやすく、老後の終の棲家としても心地よい住まいとなります。
狭いことがブレーキに。ものが増えにくい
コンパクトな家では、ムダに大きな収納スペースを確保することはできません。必然的に、新築時や入居時から持ち物を見直して、「家族の暮らしに必要な持ち物はなにか」「それをどこで使いどこに置くか」を入念に検討した住まいづくりをすることに。
暮らしに合わせて、必要最低限の収納量を適切な場所に確保しておけば、住み始めてからもムダな持ち物が増えにくくなります。もし、ものが増えてきてしまっても、収納量の限界がすぐ見えて把握できるので、不要な持ち物を処分する習慣がつきやすく、ものが増えにくくなります。
ただし、注意点も。「散らかっていても平気」という性格の人には、狭いことが心のブレーキにはなりません。狭くて、散らかり放題の住まいとなることもあるでしょう。