旅行ジャーナリスト小野アムスデン道子さんが、旅先で見つけたトピックスを紹介します。今回は、長崎五島列島の奈留島で、真珠の養殖技術を応用してペットの遺骨から真珠をつくって飼い主に戻す、「真珠葬」を見学してきました。
長崎五島列島の美しい海で、ペットの遺骨が真珠に変わる
すべての画像を見る(全9枚)今回訪れた奈留島は、長崎五島列島の一つで、長崎からは福江港を経て船で渡ります。潜伏キリシタンの島として世界文化遺産に登録されていて、構成資産である江上天主堂があり、海も緑も美しい島です。
ユーミンが荒井由美という名前でラジオDJを務めていた番組に、奈留島の高校生からの「校歌をつくってほしい」というお願いの手紙が寄せられ、「瞳を閉じて」という曲を贈ったことでも有名。
真珠養殖は、ミキモトの創業者である御木本幸吉が、1893年に世界で初めて成功させた技術です。アコヤガイを稚貝から母貝に育て、中に核を入れると、貝殻の成分で包み込まれて、1年ほどかけてそれが真珠となります。
そんなアコヤガイにペットの遺骨を託して真珠をつくり上げるのが、「真珠葬」です。
●約1年かけて出来上がる「虹の守珠(もりだま)」
6年前、愛犬のランを亡くしたあとに奈留島を訪れていた、長崎大学の水産・環境科学総合研究科の松下吉樹教授と、真珠葬創業者の増田智江さん。
二人は、島で大粒の真珠養殖を行う多賀真珠の清水多賀夫さんと出会います。一般のアコヤ真珠は7〜8mmですが、多賀真珠では11〜13mmという大粒の真珠も育てています。
「ペットの遺骨を核にした真珠ができないだろうか、という取り組みがそこから始まった」と松下教授。
最初は母貝が遺骨を壊してしまったり、吐き出してしまったり。遺骨がなくなってしまわないよう、ICチップと共に樹脂コーティングして核にしたりと工夫を重ね、2年の月日をかけて、ランの遺骨が虹色に光る真珠「虹の守珠(もりだま)」の第1号になったそうです。
真珠葬では、直径8mmの遺骨8個を預かり、核にしてアコヤガイに入れます。入れられた核が貝の中で安定するまで、貝を1か月から1か月半は養生カゴで、そのあとは沖合いの海に移して育てます。
定期的に手作業で貝の清掃をしますが、ペットのオーナーだった方がお手伝いに来られることもあるそう。そして約1年の時間をかけて、虹の守珠が出来上がります(費用はすべて一式で、税込495,000円)。