1998年からスタートした、蜷川幸雄さんが芸術監督を務めるシェイクスピア全37戯曲の完全上演。そのシリーズ完結となる『ジョン王』が、2代目芸術監督の吉田鋼太郎さんのもと2022年12月から上演されます。演出、そしてフランス王、ジョン王と三役を務める吉田鋼太郎さんに、舞台への意気込みや共演の小栗旬さんへの思い、さらにはご自身の子育てのことまで、たっぷりとお話を伺いました。
吉田鋼太郎さんインタビュー。不安と喜びが入り混じる『ジョン王』
すべての画像を見る(全5枚)2020年6月に上演予定だった『ジョン王』。しかし、コロナ禍による緊急事態宣言で中止となってしまいました。そこから、2年のときを経て上演されることとなった今作について、吉田さんはどのような思いを抱いていらっしゃるのでしょうか。
「ハラハラドキドキしている」と話すのには、今ならではの時勢が影響しています。
「2年半前にツアー公演がすべて中止になってしまった『ヘンリー八世』の再演が先日(10月末)、無事に終わりまして、本当にできてよかったね、という話をしていました。そこから間を置かずに『ジョン王』の稽古に入るのですが、少し不安はあります。まだコロナが収まったわけでは決してないので、最後までできればいいな、と」
●コロナや戦争、さまざまな変化が起こる中で演出プランをすべて見直した
そして、2年の間にコロナ禍だけではなく、世界ではさまざまな変化が起こっています。それは、『ジョン王』の世界観ともつながることだと吉田さんは話します。
「コロナがあり、さらにはロシアとウクライナの争いが始まり、世相も変わっているので、2年半前に予定していた演出プランを全部見直さなければいけません。どういう芝居をつくっていけば人の心に響くのか、慎重に考えていかなければならない。芝居ができる喜びと、果たしてそういう芝居ができるのか、不安も入り混じっていますね」
タイトルにもなっている『ジョン王』。吉田さんはジョン王について、「運の悪い人」だと言います。
「ジョン王の兄が、十字軍を活発に遠征させ領土を拡大した人で、イギリスの中でも英雄と言われています。でも、戦争を大々的に行ったものだから、国にお金がなくなったんですよね。ジョン王はその中で王権を継いだので、かわいそうな人なんですよ。領土を欠かしてしまった人、『欠地王』として有名だから評判も悪くて。自分の不利な状況を挽回しなきゃいけない、追いつめられた人なんです。そこを小栗くんが演じるフィリップが助け、やがて2人の友情が芽生えるんです」