●(2) 誰かの「得意」を生かす

私は人にものを頼むということがとても苦手です。優等生体質×負けず嫌いというダブル作用によって、「自分でできることなのに、人に頼むなんて甘えすぎじゃないか?」「まずは、自分で努力しなくちゃ」と思ってしまう…。

昨年、私のワークショップやトークイベントにたびたび来てくださっている女性が「お仕事を手伝わせてくれませんか?」とメールをくれました。お会いしてみて、とてもいい感じの方だったので、インタビューの文字起こしをやってもらうことにしました。

取材で録音しておいた音声を、レコーダーを聴きながらパソコンで文字に起こす…。これがなかなか大変な作業なのです。まったくの初心者だった彼女には、ちょっと難しいかもなあと思いながら、まずは短いデータを渡してみました。四苦八苦しながら仕上げ、「楽しかったです~!」と言ってくれたのが、なんだか嬉しくて、少しずつお願いするようになりました。

テープ起こし
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すると、どんどん腕を上げ、スピードも速くなり、完璧な文字起こしをしてくれるように! 何よりインタビューの内容を聴き、それを自分の手を使って文章に起こしていく、という作業を、彼女自身が心から楽しんでくれたのです。

「あ~、時間がない」「あ~、面倒くさい」とイライラする前に周りを見渡して、「これ、お願い」と託した方がずっとラクで、すべての段取りがスムーズになります。お願いするときに大事なのが、「それが得意な人」に頼むこと。できれば頼んだ相手も楽しくその作業をしてほしい。私がお願いしたことによって、その人の時間もちょっと豊かになればいい…。私が望むことと、相手が望むことがカチリと一致する。そんな頼み方ができればいいなあと思っています。

ただし、誰が何が得意で、「それ」を楽しんでやってくれるかどうかは、一度お願いしてみないとわかりません。だから、「ああ、困ったな」と思ったら、早めに辺りを見渡して、気軽にお願いを投げかけてみる。タイミングと相性さえよければ、きっと誰かがキャッチしてくれるはずです。

最近では夫にも、「この器、ふいといて」「大根おろしやって」と、具体的に物事を頼めるようになりました。「少しは察してよ!」とイライラするより、具体的に何をしてほしいのか言葉にする方が、お互いにずっと気持ちよく助け合えます。自分一人でがんばらなくていい。私より得意な人の力を借りてもいい。それは、私にとって、人生の後半をご機嫌に生きていくための、大切なすべになる気がしています。