実の両親や義両親と縁を切りたい、と悩む人たちが増えています。

ベストセラー

『家族という病』

の著者・下重暁子さんは、自身も家族の問題に悩まされた経験をおもちです。
家族とどう向き合い行動すればよいのかを語っていただきました。

家族の問題
家族とうまくいかないとき、どのように行動すればいいのでしょうか?(写真はイメージです)

『家族という病』著者・下重暁子さんが語る。親のあり方、子のあり方

私は過保護な母に育てられ、親の期待が重たく、しんどい思いを味わいました。

『家族という病』を書いたのは、親が亡くなって20年後。あるとき母が結婚前に父へあてた手紙が出てきて、「私は家族のことをなにも知らなかった」と思ったことがきっかけでした。
この本が多くの人に読んでもらえたのは、きれいごとではない自分の経験を赤裸々に記したからでしょうか。覚悟を決めて書き、自分もラクになれました。

●子どもは社会のもの。「親」のものではない

一般的に親との関係がうまくいかない理由は2つあります。
1つは私の親のようにかまいすぎること。もう1つは厳しく叱りすぎたり育児放棄したりして、上手に子どもを育てられないこと。

そもそも、子どもが自分のものだと思うことが間違いです。
子どもは社会のもの。たまたま母親のおなかを借りて生まれてきましたが、ある時期が来たら社会にお戻しするのが正しいと思います。

どんな動物も、成長すれば「自分で生きなさい」と親が突き放しますよね。就職、結婚をした子どもまで面倒を見ようとするのは、不自然なことです。家族も「個人」の集団。互いに自立した関係が理想ではないでしょうか。

大学職員をしていた知人女性は、息子が働かず、家から出ていきませんでした。そこで定年と同時に決心し、京都に引っ越したのです。
息子はようやく、自分でアパートを借りて働き始め、最近は彼女が上京すると、おすしをごちそうしてくれるそう。やはり、「親子」にはちょうどいい距離感が必要なのです。

距離感
ときには物理的に距離をおいて自立することも必要です(写真はイメージです)

●大事なのは精神と経済の自立

また、親が子どもをいつまでも頼るのも、いかがなものかと思います。まずは物理的に離れること、距離をおくことが鉄則でしょう。

目の前にいるから腹が立つ。離れると、人は余裕が生まれます。私は父が亡くなって母1人になったとき、あえて別のマンションに夫と引っ越しました。一緒に住めばまたいやな思いをすると感じたからです。
その代わり、毎晩必ず母に電話をかけました。短い電話ですが、外国にいても地方にいても、これだけは母が亡くなるまで続けました。

介護が必要になると同居を選ぶ人もいますが、私は第三者に看てもらいました。今はさまざまな社会的仕組みもあります。第三者に頼むには経済力が必要ですが、それが親子ともに自立して生きるということ。経済的自立と精神的自立は、自分のためにも手放してはいけません。

「主婦には難しい」という人もいるでしょう。でも主婦は「衣食住・教育・経済」全部を手がける仕事なんだから、自信をもって。そのなかで得意とするものが1つはあるはずです。
料理研究家や整理収納のプロは、主婦だった人が多いですよ。好きで学ぶうちに職業になった。意識さえすれば一生ものの職になるかもしれません。

●縁を切りたいならきってもいい。自分勝手でもいいんです

自分がどう生きたいかが、親との関係にもつながります。あなたが親と暮らしたくて、親も望むなら、もちろん同居すればいい。反対に親の存在が重い人は、離れたっていいんです。

法律上は「縁を切る」ことは難しいけれど、苦しければ「会わない」「話さない」は手だと思います。
悩んでいる人は、人と比較するから悩むのです。自分勝手でいい、とこの年になってわかりました。

人の目を気にせず「親との関係はこれでいく」と自信をもって進むこと。そのかわり、文句を言ってはダメですよ。自分が選んだことに責任をもっていかなくちゃね。