●命とかかわるため、避けては通れない出来事

愛情が深ければ別れの場面でも深手を負ってしまう。石和田さんも、2016年に三頭で生まれてきたなかの一頭が死んでしまったときは立ち直れずにいた。

そんなつらい出来事でも丁寧に話してくれ、「今でも涙が出ますね」と言葉を零す表情から痛切な自責を感じた。そして「一生背負っていかなくちゃいけないことです」と話す姿は忘れられない。

人工哺育
(写真提供/よこはま動物園ズーラシア)
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動物を失う悲しみとか色々ありますけど、癒してくれるのも動物なんですよね。やっぱりそこに居るので。今で言えば、ムジュが居る。ズーラシアの来園者にはスマトラトラのファンの方も多くいらっしゃいますが、一頭で生まれてきたムジュは死亡した子の生まれ変わりだなんていう声もあるんです。あぁそういう考え方もあるんだな…と」

●「飼育員」という仕事の魅力

「動物園にいる動物たちは本来野生で命を紡いでいます。野生動物を私たちは飼っているわけですから、動物園で生きている子たちへの責任を負わなければいけない。だからその子たちが退屈しないように、色んなおもちゃを与えてみたり、工夫を凝らします」

トラを見る石和田さん
トラを優しい目で見守る石和田さん

「思い通りに食いついてくれるときもあれば、上手くいかないときもあって、じゃあ次はこうしてみようとか考えて…。それもまたおもしろいんですよ。みんなが楽しく生活をしていけるように、考えたり工夫をしていくのは飼育員という仕事の魅力で、醍醐味ですね。まぁトラも基本的にネコですからね」

へそ天するトラ
(写真提供/よこはま動物園ズーラシア)

石和田さんが更新されているブログで、ヘソ天で眠っているトラの姿はやっぱりネコ科なんだなぁと癒される。

「そうなんですよね。きっとこの写真は喜ぶ人がいるかなと思って(笑)」