●コミュニケーションを取るために些細な変化を感じ取る

動物が健康的に暮らしていくために、大切なことが「体重の管理」。

「体重計が大きくて重いんですよね。獣舎に置いているスノコも40~50キロあるんですが、スノコを一旦どかし体重計を置いて、その上にスノコを乗せて…。スノコにエサを置いておくと食べにやってくるので体重が量れます。見た目でもなんとなくわかりますが、やはり体重というのは大事です

太りすぎもやせすぎもよくないのは、人間も同じ。だから管理していくことが大切だ。

「冬と夏とで同じエサをあげても体重は変わっていくんですよね。冬は寒いのでカロリーを消費するから秋口に量を増やしてあげないとやせていってしまう。でもそこで増やした量をそのままにしておくと太っていくので、春先からまた調節していきます」

朝の挨拶
朝の挨拶(写真提供/よこはま動物園ズーラシア)
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私は、犬とは言葉でのお喋りや意思疎通ができないから、ほかのコミュニケーションで犬の心身の調子や反応に基づく感情を推し量っている。しかし、それでも実際どうしたいか犬自身の気持ちが分からないもどかしさはある。

その子に合わせた距離感が大事なんですよね。動物種によっても違いますし、トラとかウンピョウなんか個体によっても反応が違います。人があまり好きではない個体だったら近づくと怒りますし、人に慣れていると喜びます。あとトラ同士の関係もあるので、隣にいる個体とうまくいってなかったら板を張って見えなくするとかもしますね」

●会えない日もふとよぎるトラのこと

石和田さんからは、日々トラをつぶさに観察し、とても大切に手掛けているのが伝わってくる。お休みなどでトラと離れているときも、丸1日頭によぎらない日はないのだとか。

「ふと『あぁ元気にしてるかな』と考えてしまうのは当然ありますし、『あの子は大丈夫かな』という状態で休みに入るときはすごく気になってしまいますね」

動物園でも家庭でも過ごす時間と共に愛情が募っていくのは同じ。離れていても思い出したり、自分の中で大きな存在になっていく。では、お世話している動物たちをどう考えているのだろうか。

「もちろん自分のペットではないのですが、かわいいものはかわいいですよね。愛情っていうのは注ぎすぎも危険ですが、注いでいかないとだめだと思うんです。やはり生き物同士だから、愛情をかけることによって向こうも応えてくれる

水遊び
(写真提供/よこはま動物園ズーラシア)

仕事だからって最低限のことしかやらないというのでは、だめだと思います。人それぞれ考え方があると思いますけども、私はもう30年以上やってますけどなかなかそういう域には達しないので。かわいいし、愛情は注ぐし。割り切れないんですよね

このときの「割り切れない」という言葉が強く印象に残り、自分の中で何度も復唱した。そんな石和田さんの忘れられない出来事のひとつが「最初の繁殖」である。

「出産にたどり着くまでになかなか交尾が成立しなかったんです。発情期ごとにオスとメスを一緒にしても、喧嘩は起きないですが交尾も成立しない。それから時間が経過したのですが、次の発情期ではうまく交尾が成立したので期待して…2014年8月にデルの最初の子どもが産まれました。とてもうれしかったですね」

デルにとってはこれが初産。

「落ち着ける環境をつくってあげないと、肉食獣は産んでも子を殺してしまったりする場合があるんです。だから自分の考えられる環境をつくってちゃんと育ってくれたので、あぁうまくいったんだな…と。そこで『この環境でも大丈夫だよ』と、動物から合格点をもらえるわけです

この日、インタビューの中身はもちろん言葉選びから、動物への思いやりを節々に感じた。