●これからの目標は「命を紡いでいくこと」

「ズーラシアでスマトラトラは2014年、2016年、2019年、3度と生まれています。そのとき生まれた子たちが親になって、命を紡いでいってほしいです。スマトラトラというのは数が少ないトラですから、繁殖を続けていなくちゃいけない」

ムジュ
すくすくと育つムジュ(写真提供/よこはま動物園ズーラシア)
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「2016年に産まれたミンピとダマイもですし、とくに2019年に産まれたムジュは人工哺育で手を掛けていますので、その子たちがまたお母さんになってくれること。そうやって命が繋がっていくのが夢ですね」

●動物と生きることの難しさ、楽しさを改めて実感した

石和田さんは専門的な知識と30年の経験則を備えながら、いつまでもかげりのない誠実な眼差しを動物に向けている。観察するタイミングや距離感もその子のベストを探していて、動物種やカテゴリーで括らずひとりひとりを尊重している所にも深い敬意を感じた。

そして印象的だった“割り切れない”という言葉。

飼育員を仕事として割り切らず、目一杯の愛情を注いでいる。それゆえ立ち直れないような出来事もあるが、その悲しみも携えながら、今日も明日も動物たちと生きていく。

今回の貴重なお話を和歌山に持ち帰ると、すぐさま母に体重管理の大切さを共有した。異変をキャッチするために日々観察すべしと、朝一番グゥ~っと身体を前傾にしならせる犬をまじまじと見る。あぁ大きな欠伸だ。

 

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