年末年始など母に会うたびに、「あなたは昔こうだった」と昔話を蒸し返されたり、「あなたにこれをおすすめしたい」というおせっかいを焼かれたり。そんな毎年恒例のやりとりに、つい眉をひそめてしまう人たちも決して少なくありません。 そこで、『母のトリセツ 』(扶桑社刊)を上梓した脳科学者の黒川伊保子さんは、「母親と自分のコミュニケーションにおいて、傷をできるだけ少なくするアイデア」を提。「母親の蒸し返しグセやおせっかいへの対処法」を伺いました。

母と娘
昔の話をしたがる母や義母、それには理由があったのです(※写真はイメージです)
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母の「蒸し返しグセ」の理由。そして対処法

親戚、あるいは母親に必ずいるのが、昔話を蒸し返す人。「長く生きた女には、必ず蒸し返すクセがある」と語るのは脳科学者の黒川伊保子さんです。

「私も昔、お正月に母が筑前煮を出すと必ず、『あなたがお嫁に来てすぐのころ、こんにゃくに味が染みない、どうしたらいい? って、駆け込んできたわよね。田舎育ちでウブだったから』と蒸し返す叔母がいました。都会育ちで、自分に絶対の自信がある人で、本人には悪気はないのでしょうが、ことばに毒がありますよね。母はきっとそのたびに、『あのとき頼らなければよかった』と悲しい想いをしていたに違いありません。私も、私の小さい時の所業を何十年経っても蒸し返す、母の旧知の友人が苦手でしたから」

長く生きた女性たちのそんなクセに、うんざりさせられた経験は誰でもあるのではないでしょうか?

 

●昔の話を引きずる人にははっきりNOと言うべし

ただ、この蒸し返しグセは、じつは、女性脳の大事な機能でもあるのだとか。

「過去の経験を瞬時に引き出して、子どもを守るのは、母性の基本機能です。つまり、女らしい人ほど、蒸し返す。『悪気がなくて、おせっかいで、蒸し返す』のが、女性脳の本質と言っていいでしょう。そうでないと子どもが無事に育ちませんから。母や姑が蒸し返しをするのは、もはや仕方がない人類の真理でもあります」

絶対に変えられない蒸し返し癖とおせっかい。それゆえ、子ども側に必要なのは、「よかれと思ってやってくれている母や姑の蒸し返しグセにどう対処するか」です。

「相手の好意がおせっかいだと感じたら、これはもう、率直に、NOと言うしかありません。ことが起こり始めたら、できるだけ早く。早いほうが傷は少ないですから。あっさりと『お母さん、お願い、今は放っておいて』と言えばいいんです。『静かにしていたいから』、『仕事(勉強)に専念したいから』、『考え事をしたいから』と。本当の理由は、『母親の相手をする時間(気力)がない』、『母親の顔を見ると気が滅入る』だとしても、原因まで正直に言う必要はありません。放っておいてほしい気持ちだけを正直に、理由はあくまでも『ほかに専念したいことがあって、残念ながら』を装ってあげましょう」