女性ならばだれもが経験する「更年期」。体や心に大きな変化をもたらし、個人差はあるものの不調に悩む人や更年期をマイナスイメージでとらえる人も多くいます。

そんな更年期を「人生をリセットする大きなチャンス」と語るのは、よしの女性診療所院長の吉野一枝先生。更年期をラクに過ごし、健やかな老年期を迎えるためのケア方法について教えてもらいました。

更年期の不調には自分ファーストの徹底を!

「更年期の不調とは闘わず、受け入れることが大切です。家族につくすことを手放し、自分の体を大事に考えるようにしていきましょう。更年期は、人生の後半を楽しく前向きに過ごせるようシフトチェンジできる大きなチャンス。“自分ファースト”を徹底してください」

生活習慣を見直し、日常でできるケアを行うことも更年期をラクに過ごすコツです。

●食事:量や時間を見直し、和食を中心にバランスよく

和食を中心に野菜を多めに取ることを意識
更年期にはバランスのいい食事を心がけて
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代謝が低下する更年期は、若い頃と同じ食生活を送っているとほぼ太ります。カロリーが低めで栄養バランスのとれた和食は、塩分さえ気をつければ世界的にみても優秀な健康食。更年期世代は和食を中心に野菜を多めに取ることを意識して。食事は寝る3時間前までには終え、腹八分目にするよう気をつけましょう。

●運動:毎日続けられる軽い運動を習慣化する

ウォーキング

日頃の運動不足が更年期の不調につながることもあります。これまで運動習慣のない人は、更年期を機にぜひ身につけたいところ。40代、50代で始めておくと、年をとっても持続しやすいです。ウォーキングやストレッチなど、気持ちよくできることを日常的に取り入れていけば、基礎代謝が上がり、生活習慣病の予防や骨粗しょう症を防ぐ効果も期待できます。

●リラックス:不調を感じたら心身ともにしっかりと休息をとる

不調を感じたら心身ともにしっかりと休息をとる

不調が続くと、気分も沈みがち。そんなときに無理をせず、心と体がリラックスすることに意識を向けましょう。少しでも快適に過ごせるよう、部屋にアロマを香らせたり、よく眠れるよう睡眠環境を整えたりしてしっかり休むこと。時間がないときには、その場でゆったりと深呼吸を数回繰り返すだけでも気持ちがラクになるのでお試しを。

●ストレス解消:自分なりの解消法を見つけこまめに発散を

理解してくれそうな人に話を聞いてもらう

心と体に変動をもたらす更年期にストレスを抱えてしまうと、症状が悪化しやすくなります。自分なりの解消法を見つけ、早めの対処が大切です。理解してくれそうな人に話を聞いてもらう、1人カラオケに行って歌いまくる、映画を観て号泣するなど、終わったあと「あーすっきりした!」と思えるような手段で、こまめに発散するとよいでしょう。

更年期の不調をサポート! 病院でできる治療法

不調を改善するためにはセルフケアのほか、病院でできる治療も。おもな方法を紹介します。

●ホルモン補充療法(HRT)

更年期の不調は女性ホルモンが急激に減っていくことで起こります。この減少をなだらかにするのがホルモン補充療法。飲み薬、パッチ剤(貼り薬)、ジェル剤があり、パッチ剤とジェル剤は胃腸を通過しないので内臓への負担が少なく、副作用も起きにくいので主流となっています。

●低用量ピル

低用量ピルは基本的には更年期の治療薬ではありませんが、女性ホルモンを安定させる効果あり。40代前半までの方が服用すれば、症状の緩和に役立つのに加え、避妊もできます。閉経前なら妊娠の可能性はゼロではないので、避けたい方向きです。

●漢方薬

症状に直接効くわけではないものの、穏やかに心身の状態を整えます。婦人科の処方では基本的に保険が利き、1か月2000〜3000円が平均的。乳がんや心筋梗塞、脳梗塞など経験している方はHRTが使えないため、漢方薬治療がメインとなります。

●サプリメント

更年期の不調に悩む方をサポートする成分として、最近注目されている「エクオール」。女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があります。ただし、日本人の約半数の人しか腸内で生成できないので、必要ならサプリメントで補うとよいでしょう。