断熱材の性能(熱の移動のしにくさ)は、厚さで決まる

断熱材の性能値である熱伝導率は素材ごとに数値が違いますが、省エネで求められる断熱材の熱抵抗値(熱の移動のしにくさ)は、素材の厚さによって決まります。つまり、熱伝導率が高くても、断熱材自体の厚さを増やせば、指定される熱抵抗値を得ることができるのです。

ここで注意したいことは、断熱性能値だけ比較すれば、材料の厚みに差があるけど性能自体に差はないということです。いろいろな宣伝文句がありますが、そのメリット、デメリットを考慮したうえで選択することが肝要です。

 

コスパから選ぶならグラスウールのマット製品

グラスウールのマット
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グラスウール製の断熱材は、その多くは日本の木造住宅のモジュール合わせて、マット状に整形されています。サイズ、厚さ、密度など多くの製品があり、加工もしやすいことから、もっとも普及してる断熱材です。 グラスウールはビンや蛍光灯などの廃ガラスが主原料。不燃材料なので燃えないことが大きな特徴です。

そして比較的安価な材料で、特別な施工方法が必要ではないのでコスパに優れています。

大きなデメリットは施工のできにバラつきがあることです。施工コストが低いのは、特別な技法を必要としないため、大工さんたちが木工事と一緒に請け負うことが一般的だからです。

ですから、施工方法や手順を守らない職人や現場監督による、施工ミスが多いとの指摘もあります。施工手順通り丁寧に工事ができれば、ほかの断熱材と比較しても遜色ない材料です。

グラスウールは製造時に出る端材や、施工時に出る端材に加えて、建物の改修や取り壊しなどで不要に、不要になった使用ずみのものまで、再生処理して利用できます。これまでは埋め立て処分が主流でしたが、これからはサスティナブルの観点から、再利用が本格化していくことでしょう。

 

新聞などの古紙が主原料のセルローズファイバー

セルローズファイバー

セルローズファイバーは回収された新聞古紙を主原料に、防熱・撥水性能を付加した製品です。

 

セルローズファイバーの施工の様子

一般的には、綿状にしたファイバーを吹き込んで充填する施工方法です。専門業者が施工するので、施工の技量は比較的安定しています。

また、木質繊維は繊維の中にたくさんの空気胞があるため、高い吸音性を持ちます。密度が大きくかなり重いので、遮音にも効果的で優れた防音性能があります。さらに、素材が天然の木質繊維ですから繰り返し利用できことが環境にやさしいと言えます。

また、セルローズファイバーは、繊維にホウ素系の薬品を混入し防燃処理することで、準不燃材料として国土交通大臣認定を取得しています。なお、このホウ酸の効果で、シロアリやゴキブリを近づけさせないとの報告もあります。

 

セルローズファイバーは施工費が高め

いちばんのデメリットは、施工費が高いこと。材料自体の値段が高く、施工に手間がかかるため、施工費も高くなります。グラスウールでの同性能の住宅で比較すると、2倍近くコストがかかるとご理解ください。

 

メリットの多さでおすすめの、吹きつけ硬質ウレタンフォーム

吹つけ硬質ウレタンフォームの工事・吹つけ終了時の状況

プラスティック系の断熱材で、壁や屋根内部に充填する材料です。ここでおすすめなのは「吹付け硬質ウレタンフォームA種3」という、水を使って現場で発泡させる断熱材です。

現在では、新築戸建て住宅の現場で、2割ほどのシェアがあるといわれています。 主成分のポリウレタン樹脂を発泡させたスポンジ状のもので、小さな硬い泡の集合体なので、優れた断熱性が得られます。

 

吹つけ硬質ウレタンフォーム工事・整形後の状況

接着力もあるので、柱や梁に密着してするので気密性が上がります。ですから、地震時の追従性がよいとされています。また、セルローズファイバーほどではないですが、防音効果が期待できます。現場で発砲して充填させる工法で、専門業者が施工するので、技量はある程度安定しています。

また、温室効果の大きいフロンガスを使わず、シックハウスの原因となる素材がゼロ。揮発性有機化合物(VOC)を含む特定建材には指定されていません。

材料自体のリサイクルはできません。柱や梁などに密着しているので焼却処分になり、清掃工場で熱エネルギーになりますので、一概に環境負荷が高いとは言いきれません。

 

吹付け硬質ウレタンフォーム工事・気密シート張りの様子

デメリットとして上げるとすると、グラスウールに比べると割高になること、防火性能に劣ることです。