川上麻衣子の猫とフィーカ fika med katten
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女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセーがスタート。
一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地でもあるスウェーデンのこと(フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと)などを写真と文章でつづります。

第1回は、川上さんが支援活動を行う「保護猫」について、詳しく教えてもらいました。

保護猫ってなに?女優・川上麻衣子さんがつづる猫との出合い

18歳で1匹の猫と出会い、ともに暮らし始めたことをきっかけに、「猫」という魔性の生き物に心を奪われ、3年前に、猫に関する情報発信やサービス提供を行う「ねこと今日」を立ち上げるまでに至りました。

●18歳で初めて飼った猫のこと

寝転ぶ女性と猫
30歳の頃の川上麻衣子さんと当時飼っていた2匹の猫

18歳といえば私にとっては、ついこの前のようではありますが、時代はバブルを迎える直前。ペットも海外からの珍しい品種が増え、血統を競うような風潮もありました。

私の心を奪った最初の猫も、当時人気の高いヒマラヤンという長毛の猫でした。今になって思えばまったくの初心者であった私が一人暮らしの友として暮すには、少々ハードルは高い猫だったようにも思います。

プライドが高く、長毛の美しい毛並みも日々のブラッシングを怠るとすぐに、脇の下やお腹に毛玉ができてしまい、かわいそうな思いをさせたこともあります。それでも、やはり手がかかる分、愛しさも倍増となるもので、今でも特別な存在として私の心の中に生きています。

●1匹の保護猫との出合い

子猫にミルクを与える様子
千葉の動物病院で保護されたのち、誕生した子猫のうちの1匹

さてそんな私が、初めて「保護猫」と呼ばれる猫の存在を本格的に意識するようになったのは、まだ今から5年ほど前のことです。ある日友人のSNSで、人間に虐待を受け、瀕死の状態で保護した猫が病院で出産したという投稿を目にしたのです。

子猫を持つ様子
生まれたばかりの子猫

「虐待」そして「保護」。私の中でざわざわとした気持ちがおさまらず、千葉に住むその友人の元を訪れ病院の先生から事情を伺い、里親の見つかっていなかった1匹をわが家で育てることとしました。

今でも忘れられないのは、そのときに病院で対面した母猫の瞳です。

母猫と子どもたち
保護された母猫と子どもたち

けがの回復も順調で子育てに一生懸命な母猫は人間を憎んでもおかしくない状況であったはずなのですが、命を救ってくれたのもまた人間であったことを理解しているような聡明な瞳で、私を見つめてくれたのです。

長い間、外猫として暮らしてきた母猫は、その後、その病院にて避妊手術を経て、また外での暮らしに戻ったそうです。手術をした猫たちの耳にはその印となるように花びらの形にカットを施し、「さくら猫」と呼ばれていることもこのときに知りました。

猫のCOCORO
保護猫から誕生した1匹の子猫を引き取りCOCORO(ココロ)と命名

世の中には私の知らない、猫と人の懸命な世界があることを思い知らされた出来事となりました。「保護猫」という言葉には、単に猫を保護したというだけでは収まらない、たくさんの思いが込められています。

●保護猫2匹と暮らし、月に2回の譲渡会を開催

猫のTACK
里親になった2匹目の保護猫TACK(タック)

このときにわが家に来た「COCORO(ココロ)」というキジ猫と、同じ地域で保護された「TACK(タック)」の2匹と現在わたしは暮らしています。そして今では「ねこと今日」の活動の一環で月に2回の譲渡会(ボランティア団体などで保護された猫を里親希望の方へ譲り渡す仕組み)を、ホームグランドである東京・谷中で開催しています。

女性とゲージに入っている猫
谷中で開催している譲渡会の様子

2020年1月から開催を始めた猫譲渡会は、コロナとの戦いのなかにありながらも、今日までに、約300匹近くの猫たちにご縁が生まれました。

しあわせにゃんこ

」というボランティア団体が中心となって行っている譲渡会にはたくさんの保護主さんがいて、常に、猫を保護し、ときには子猫を育て、ときには人慣れしていない凶暴化した猫を、根気強い愛情で穏やかに育て、譲渡会デビューさせるために活動をしています。

彼らから聞く現場の声は、私の想像を遥かに越えたものであり、なんとか人と猫の共生のために力になれることはないかと、模索をしています。

●まだまだ奥が深い猫の生態

猫を抱える女性
千駄木にあるショップ兼サロン「Maj no ma(まいの間)」にて

猫がつないでくれた縁は、人間同士の輪も広げてくれ、出会った獣医さんや動物行動学の先生方とは、猫の飼い主のためのアカデミーもつくりました。猫の生態を学ぶことで、日々目にする猫の行動や仕草の原点を知り、眼から鱗の授業に、私自身わくわくしながら参加しています。

深夜に体調を壊すことも多い猫のバイタルサイン(生命兆候)を知る授業では、飼い猫の脈をとる方法や、貧血や脱水を起こしていないかを判断する基礎を学びます。

猫と暮らしながら、その生態を知ること、そして看取りを考えることは、自身の死生観に大きな影響を与えてくれた気がしています。まだまだ尽きない猫話。少しでも皆さんの参考になればと思います。

*キャットアカデミー第2期生募集中。詳細は「

ねこと今日 Neko-to-kyo」

にて


【川上麻衣子さん】

女優。1966年生まれ。14歳でデビューし、数々のテレビ・映画・舞台に出演。愛猫家としても有名で、2018年に仲間とともに一般社団法人「

ねこと今日 Neko-to-kyo

」を立ち上げ、理事長を務める。2019年千駄木にショップ兼サロン「Maj no ma(まいの間)」をオープン。YouTubeチャンネル「

川上麻衣子ねこと今日neko-to-kyo

」にて動画も配信中。著書に『

彼の彼女と私の538日 猫からはじまる幸せのカタチ

』(竹書房刊)など