●義母との生活…自分の家が自分の家でないように

ソファに座る女性
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その頃、夫がリストラに遭い、時間ができたこともあって、大山さんは義母を引き取ることを承諾しました。ただし条件をつけたといいます。施設に入ることを前提として、引き取るのはそれまでの期間とすること。そして、義母の面倒は夫がすべて見て、自分はなにもしない、の2つでした。

「私はアルバイトでしたが毎日フルタイムで働いていました。夫がリストラに遭ったのに息子の高校にお金がかかる。コロナでシフトが減ってしまったこともあって、夜勤の仕事も始めたところでした。私になにかしろなんて無理な話です」

大山さんの言った条件は義母にも夫から話し、承諾した上で家に来ることになりました。義母を迎えるにあたって、大山さんは自宅の部屋の使い方を変更。義母と夫はリビング横の和室に寝てもらい、義母の部屋は和室としました。大山さんはそれまで夫が使っていた玄関脇の小部屋を自分の部屋に。

「でもやっぱり大変でした。自分の家なのに、くつろげないんです」

●週末に宿泊介護サービスを利用するも10万円の出費に…

義母は一日じゅうリビングで過ごし、ほとんど外出しません。夜勤明けから次の仕事の始まるまでの数時間リラックスしようと思っても、リビングに義母がいれば気を遣いました。大山さんは帰ると玄関脇の部屋に直行し、ほとんどそこで過ごすようになりました。さらに夜もなかなか寝つけなかったそう。

「義母は間に合わないのでオムツをしていましたが、基本的にはトイレに行きました。ただ頻尿で、夜間も1時間おきに行くんです。足が弱っているので、途中で転ぶ。その音で、夫も私も目が覚めてしまいました」

家族の負担を軽減するための“命綱”である介護サービスも、費用の都合で思ったようには利用できなかったといいます。

「週末だけは宿泊サービスを利用しました。週末になると悪いけど、『やっと(義母が)いなくなってくれた…』という気持ちでした。ただ宿泊サービスは介護保険適用外で、うちが利用していた施設では毎週使うと月10万円くらいでした。本当は平日も使いたかったけどさすがに無理でした」

●自宅介護の限界…ついに家族ゲンカに発展

義母の飲酒癖も問題だったといいます。体が不自由になった義母の楽しみといえばお酒を飲むこと。ただ薬が効かくなるため、「夕飯のときにコップ1杯まで」と約束したといいますが、昼間、一人でいるときに飲んでしまいました。

「お酒を高い棚の上に移動して、勝手に飲めないようにしたんです。すると息子に酒を取らせるようになって。息子もダメだよ、といいながら義母に言われたら断りきれません」

義母は一人にしておけばお茶をこぼしたり、転倒したりしてしまいます。おむつの交換も必要です。夫の新しい仕事もスタートすると、いよいよ自宅介護は限界に。

「挙句の果ては義母が『この家、居心地悪い』なんて言ったんです。私も義母に負けず劣らず気が強いので、それでカーッとなって『なに言ってんの! ふざけんじゃないわよ!』って。たださすがにこのときは夫も母に怒って。自分の親だから優しくしたいけど、家族も自分もいっぱいいっぱい。最後は夫がいちばん、母親にイライラしていました」