子どもの発達に「なにかおかしい?」と思ったとき、親にできることとはなんでしょうか。

ESSEでも活躍する料理研究家でフードコーディネーターのあまこようこさんの長男・そうりくんは現在11歳。発達遅延の診断を受け、感覚過敏の特徴をもっています。食に興味がない子どもに食べてもらうにはどうすればいいのか、ほかの子と違うということを親としてどう向きえばいいのか、さまざまな試行錯誤をされてきました。

メガネをかけた女性
料理研究家、フードコーディネーターのあまこようこさん

ここでは、発売されたばかりのレシピ&エッセイ集『

食べないっ子も、いただきます! うちのやさしいかいじゅう ごはんレシピ

』(東洋館出版社刊)より、そうりくんが3歳~年長さんの頃のエピソードと、子どもが食べやすいお弁当レシピを、一部抜粋してお送りします。

何事もゆっくり進む息子の成長。親として模索する日々で気づいたこと

キッチンに子どもと女性
一緒に食事の準備をするあまこさんと、長男そうりくん(写真提供:あまこようこさん)

長男のそうりくんが0歳のときに、なにかがおかしいと思い始めたあまこさん。1歳半で保育ルームに預け、少しずつそうりくんの特性がわかってきました。今回は、3歳から新たに通い始めた区立保育園時代の言語聴覚療法士の先生との出会いと、あまこさんがいちばん泣いた日のお話です。

●ST(言語聴覚療法士)の先生に会う

3歳になって、ようやく歩くことができたころ、言語聴覚療法士の先生のところに行った。そうりの食事をどうしたらいいか疑問だらけだったので話を聞いてもらえるというのは、不安よりも、期待でしかなかった。

先生にお弁当をつくって持ってきてくださいといわれ、お弁当を持参して行ったけれど、このころのそうりは、1回目は泣き叫んで部屋に入るだけで終わり。3回目くらいでようやくお弁当のフタを開けるところまでいき、4回目にしてようやく食べる姿を先生に見てもらえた。診断は、舌は動いていて、奥歯も少しだけだけど使っているので問題はないとのことだった。

それ本当かな? なんて思ってしまったけれど、その言葉をもらっただけでも安心材料にはなる。その後もバナナや棒状にしたおにぎりで噛みちぎる練習といわれたけれど、何度やっても噛みちぎることができなかった。バナナやおにぎりが好きなら練習も楽しいけれど、そうりは「食べること」そのものにあまり興味がないようだった。

お菓子がほしい、ジュースが飲みたいということを一切言わない。だからお腹が空くときを狙って練習する。一度、皮をむきかけのバナナを渡したら、目を離したすきに、そのまま皮ごとかじってしまった。空腹は最高の調味料とはよくいったもんだ。口を動かす練習も、このとき教わった。歯みがきのあとに歯茎を指でさわったり、ほっぺをつまんで刺激したりする。いやがるそうりに「10秒だよ!」とカウントダウンしてがんばってもらう。

カレーを食べる子ども
カレーは今も大好きなメニューのひとつ

そんなそうりでも、この頃からおかわりするメニューがあった。カレーやシチュー。おかわりという言葉の代わりにからっぽになったお皿を持ってカレー鍋の前へ。そうりの貴重な「好き」を目の当たりにして、ほかにも好きを見つけてあげたい気持ちになった。なんでも急にできるようになったりはしないけど、半年とか1年かけて、ゆっくりできるようになっていく。

●わたしがいちばん泣いた日

サッカーボールと子ども
保育園年長時代のそうりくん。サッカーなど体を動かすのも大好き(写真提供:あまこようこさん)

そうりが年長さんのときの運動会。そうりはいつものように先生が横にいてサポートされている。

どうしてか、運動会のあいだ何度も目に涙がいっぱいたまっては、ぐっとこらえた。みんなと一緒に列に並んでいるのを、すごいと思ったからか。それとも、さらし者にされているようにも見えて、がんばっているそうりを素直に応援できないからか。2歳児や3歳児よりもできないことの悲しみとかそういうのではなく。でも、それも少しはあったのかもしれない。

そうりが、みんなについて行くだけで、感動したと、お友だちのお母さんにいわれた。そのお友だちは、登り棒もなわとびもできる。うらやましいとも違うけど、できることなら、途中で抜け出したかった。

寝るとき、そうりの寝息を聞いて、また、涙があふれ出た。無邪気な寝息。トイレで鼻水かんで、おえつしそうなぐらい涙が出た。夫に知られたくなくて。なんで知られたくないのか。泣いているうちに気がついた。

涙が出る意味も、涙を隠したい意味も。母親としてなにもしてあげられないもどかしさ。これか。

また、涙が出た。そうりのことで、こんなに涙が出たのは初めて。

毎年来る運動会や発表会はいつも憂鬱。楽しみよりも不安。だけど、そうりは必ずわたしを笑わせてくれる。この日だって、かけっこのとき、みんなと一斉に走ったと思ったら、ゴールに向かうのではなく、ゴール近くにあった自分の席に座りに行った。そんなおちゃめなそうり。