中学入試が大詰めを迎え、高校・大学入試シーズンが到来する2月、3月。とくに、受験生がいる家庭は今、精神面・健康面など、さまざまなサポートをされていることと思います。

 ところで、「2020年、日本の大学入試が大きく変わる」という話を聞いたことがあるでしょうか。

 象徴的なのは、4つの選択肢から1つの正解を選んでマークシートを塗りつぶす、といった「センター試験」がなくなること。その代わりに、全国一斉型の学力試験が行われることになりそうです。

 そして、大学入試に関しては、「暗記力」や「計算力」などを中心に問う内容から一転、グループ・ディスカッションやディベートなど、「考える力」「表現する力」を問う試験へと変わり、変化の激しいグローバル化社会に対応できる人材を育てようというのです。

 来春、中学3年生になるお子さん以降は、この「新しい大学入試」を受けることになります。それにともない、中学・高校の試験内容や授業もすでに大きく変わりはじめているのだとか。

 とくに変化が速いと言われている私立中学校の事情に詳しい、株式会社日能研関東代表取締役の小嶋隆さんに、お話を伺いました。

2020年、センター試験がなくなり、大学入試に大きな変化が
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2020年、センター試験がなくなり、大学入試に大きな変化が

――私立中の試験や授業内容が変化しているのは、なぜなのでしょうか?

国の教育改革は、全国一斉にドンとやらなくてはならないので、どうしても時間がかかります。その点、私学は動きやすい部分がありますから、時代に応じた変化に舵を切りやすいのではないでしょうか

――具体的には、どのような変化がみられるのでしょうか?

たとえば、同じ学校でも2000年と2015年の入試問題を比べると、穴埋め式が半分、記述式が半分だったのに対し、今ではほとんどが記述式で、自分の考えはどうだとか、どういうふうに答えを導いたのかを問う流れに完全に変わってきています。「ドラえもんは、なぜ生き物とは認められないのか?」。数年前、麻布中学でこんな入試問題が話題になりました

――「未来から来た猫型ロボットだから」ということでしょうか?

その答えだと、たぶんバツですね。じつはその問題文には、地球上の「生物」に共通する特徴として、(1)「自分と外界とを区別する境目をもつ」、(2)「自身が成長したり、子をつくったりする」、(3)「エネルギーをたくわえたり、使ったりするしくみをもっている」の3つが挙げられていました。これらをしっかり読んで解き進めれば、ドラえもんの場合は(2)にあてはまらないので生物としては認められない、というのが模範解答になるわけです。これは知識ではなく、関連性、発展性を問うている例だと言えます

――暗記力、記憶力だけではなく、思考力、次を考える能力が求められているのですね

そうですね。じつは、各学校の入試問題というのは、「うちはこういう教育をしたい」というメッセージにもなっているんです

――ということは、入学したあとの授業内容も、かつての詰め込み式ではなくて、発想を生かすような対話・討論型に変わってきているということですか?

はい。いま学校の校舎の建て替えなどでも、対話型の授業ができるような教室をつくったりしています。黒板があって、皆が先生のほうを向くのではなく、向き合えるようなつくりなど、教室のハードの部分に手を付けている学校も増えていますね

――本当に今、学校が変わってきているのですね。公立中学校はどうなのでしょうか?

中高一貫校も増えました。高校受験がないわけです。私学と違って年間の諸経費が安いですから、経済的な部分を含めて、かなりの人気です。また東京ではある高校で、医学部医学科を目指す取り組みが始まっています。私立だけでなく、公立の学校も岐路に立たされている状況ではないでしょうか

2020年、センター試験がなくなり、大学入試に大きな変化が

 いかがでしたでしょうか。具体的にどんな変化が起きるかは未知数ですが、これからは求められる「学力」ががらりと変わるということだけは、間違いありません。子どもがこれから本当に身につけるべき力はどんなものなのか、冷静に見極めていく必要がありそうです。

 小嶋さんは、フジテレビの「

ホウドウキョク

」でネット配信中の番組、『教育のキモ』にも出演しています。変わりゆく日本の教育をわかりやすく知りたい方は、こちらもチェックを。