30歳を過ぎたら、きちんと知っておきたい婦人病のこと。症状や治療について、医師に聞いてみました。今回は、更年期障害について。
すべての画像を見る(全3枚)更年期の症状は人それぞれ。つらいときは婦人科へ
「更年期とは、一般に閉経をはさんだ45~55歳頃までを指します。この時期の卵巣機能の低下が引き起こすさまざまな心身の不調が更年期障害です」と語るのは飯田橋レディースクリニックの岡野浩哉先生。
その症状は、のぼせや発汗から、しびれ、肩こり、さらには不眠、イライラまで多岐にわたり、生活に支障をきたすほど強く出る人から、ごく軽くすむ人まで、大きく異なります。
「だからこそ治療にあたってはひとりひとりの訴えをじっくり聞くことが大切。それに応じて、処方する薬も当然変わってきます」
個人差が激しい原因は、解明されておらず、予防法もないとのこと。「でも、症状がつらくて大変だったら、婦人科にぜひ相談してください。更年期障害は治療すれば改善される病気ですから」。
診断のポイント
【1】更年期に出現している症状である
【2】ほかの疾病に起因していない
【3】生活に支障がある
※更年期に似た症状があっても、その人が若く、生理が順調なら別の病気を疑うべき。つまり、その症状がほかの疾病に起因せず、卵巣機能の低下によるものであり、本人の生活に支障をきたしているなら、更年期障害と診断されます
【更年期に感じる症状の発現頻度】
出典:日本産婦人科学会雑誌 第65巻 第5号
肩こり・腰痛・手足の痛み 57.3%
疲れやすい 55.7%
急に顔がほてる 51.3%
汗をかきやすい 50.8%
怒りやすく、イライラする 41.1%
くよくよしたり、憂うつになる 40.4%
腰や手足が冷えやすい 39.2%
症状、検査方法、治療法について
【症状】のぼせ、ほてり、発汗などが代表的な症状
代表格は、のぼせ、ほてり、発汗など女性ホルモンの減少が直接影響している血管運動神経症状。また、女性ホルモンが不足すると、セロトニンなどの脳内物質も減るため、うつや不安、イライラ、不眠などの精神症状も現れやすくなる。さらには、肩こり、吐き気、しびれ、関節痛などホルモンと関係が薄そうな症状も。
【検査】血液検査による卵巣機能のチェックと的確な問診が大切
卵巣機能の低下は、血液検査でわかる。岡野先生がもっとも大切にしているのは問診。「話をじっくり聞きながら、その人に合った治療法を探していきます」。
【治療法】症状に応じ、ホルモン治療や漢方薬、抗うつ剤などを処方
のぼせ、ほてり、発汗など血管運動神経症状には、HRT(ホルモン補充療法)がよく効く。気分の変調や関節痛、肩こりなども改善することが多い。不眠やイライラなどの精神症状は、睡眠導入剤や抗うつ剤、抗不安薬などが有効。患者の要望に応じて漢方薬で体のバランスを整えることを優先させることもある。
【岡野浩哉先生】
病院data 飯田橋レディースクリニック
○住所:東京都千代田区飯田橋3―10―10 ガーデン・エア・タワー2F
TEL:03・3556・8333
群馬大学医学部産婦人科、東京女子医科大学産婦人科などにおいて更年期外来を受けもつ。東京女子医科大学講師を経て、2008年に飯田橋レディースクリニックを開設。日本女性医学学会(日本更年期医学会)の幹事・評議員などを歴任