次に到着したのは北坂養鶏場直売所。

北坂養鶏場は純国産鶏を育てている養鶏場だ。直売所では採れたての新鮮な卵や卵の殻を割らずにつくった、その名も“たまごまるごとプリン”など養鶏場ならではのオリジナル生産物が販売されている。

さてさて、こちらで犬にとっても一大イベントが発生する。人生ならぬ犬生のなかで犬がこれまで対面した最大の生き物(人間を除く)はご近所さんのゴールデンレトリバーだった。それがたった今、更新される。山羊と初対面を交わした!

ヤギ
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ヤギと会った犬

山羊の名はくるめちゃんといって、北坂養鶏場の敷地内の原っぱから私たちを迎えてくれる。「山羊っていう生き物やで。きれいで穏やかそうな子やなぁ」と犬に声を掛けるが、犬は初めて見る山羊から目が離せなくなっている。気になるけど怖いという緊張が犬から感じる。お互いに何かあっては遅いので近寄らせはしないが…。

養鶏場

直売上のとなりには平飼い小屋があって十羽ほどの鶏が暮らしている。田んぼに囲まれたみどり豊かな育波という土地でくるめちゃんと鶏たちがスタッフの手で大切に育まれている。

ここで先述した横山が働いている。横山がお客様の対応を終えたタイミングで声を掛けると、わざわざ少し時間をつくってくれた。登場して0.5秒で横山の持つ空気感に北田家が包まれる。家族みな横山が好きで、特に妹は会えるのを楽しみにしていた。

北坂養鶏場の卵を求めている人はたくさんいるので長居せず、卵やプリンを購入して横山と手を振り合った。

ノマド村

いよいよ最後の目的地はノマド村。

ノマド村とは2009年に開設された淡路市の芸術文化施設で、廃校となった旧生穂第2小学校の校舎を再生して写真家、陶芸家、画家、音楽家、料理家など多方面の芸術家や職人が工房・ギャラリー・週末カフェ等として活用し、様々な交流の場になっている。だが残念なことに11月に運営を終えるそうだ。2度の廃校を迎えるなんて。

この日はカフェの営業もあったが泣く泣く通りすぎて、横山の展示を拝見する。横山が展示している一室は宿直室だった畳部屋。長い間休息するための部屋として使われていた気配が残留している中、横山の写真が展示されている。

女性
作品

ノマド村を発って最後に淡路サービスエリアに立ち寄れば、展望台から明石海峡が一望できる。これからあの橋を渡って、帰路を辿るのだ。

振り返る犬

今日一日、犬の目にどんなふうに世界は映っていたのだろう。「楽しかった?」と犬の頭を撫でれば家みたいに撫でやすいように耳を開いてくれる。久しぶりに犬の想いを完全に分からないもどかしさを感じる。

遠くを見る犬

和歌山に帰ってきてから北坂養鶏場で購入した卵は食卓で大活躍であった。卵には“さくら”と“もみじ”の二種類があって、さくらは調理、もみじは生で食べるのに向いていると適した食べ方があるのだ。

たまごさくら
さくら
たまごもみじ
もみじ

養鶏農家の皆さんのこだわりと労力に敬重し、生命を奪う畏怖の念を抱き、味わって卵を食す。

卵かけごはん

口に入れて食べた物で身体が出来上がっているというのは当たり前だけれど、改めてその事実に立ち返った。良い食事は食育に繋がっていると淡路島が教えてくれた。

海と犬

この連載が本

『inubot回覧板』

(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。

【写真・文/北田瑞絵】

1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント

@inu_10kgを運営