調理スペースと収納を兼ねたキッチンのアイランドカウンター。新築やリフォームのタイミングで設置したいと考えている人も多いのではないでしょうか。家具工房「フリーハンドイマイ」の代表・今井大輔さんは、打ち合わせの際、アイランドカウンターを壁や床に固定したほうがいいかどうか、お客様からよく相談されるといいます。安全性や使い勝手のことを考えると、固定したほうがいい、という今井さんに詳しくお話を聞きました。

キッチンのアイランドカウンター
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目次:

アイランドカウンターを固定しないでつくることはできる?固定しないと耐久性や安全性の面でデメリットがあるつくりつけ家具のおかげで家が早く売却できたケースもダイニングテーブルは固定せずフレキシブルに使えるほうがいい

アイランドカウンターを固定しないでつくることはできる?

アイランドカウンターとダイニングテーブル

キッチンが壁づけの場合、キッチンとリビングダイニングとの間仕切りを兼ねて、アイランドカウンターをつくりたいというオーダーをいただくことがよくあります。調理スペースが確保できるだけでなく、食材や食器の収納スペース、ゴミ箱の定位置など、さまざまな機能をもたせることができ、あるととても便利です。

打ち合わせの際「壁や床に穴をあけたくないので、固定しないで置くだけの形にすることはできますか」「将来引っ越すことになったら持っていきたいので、固定しないでつくることはできますか」と質問されることがあります。

もちろん、固定しないでつくることはできますが、アイランドカウンターの場合は床に(ペニンシュラタイプの場合は壁にも)固定できるほうがいいと私は思っています。たとえば、カウンターに家電用のコンセントを設けたりする場合は、床に固定したほうが配線の取り回しがスムーズにできる、といった施工側の事情などもあります。

固定しないと耐久性や安全性の面でデメリットがある

ゴミ箱を置いたり、ダイニング側から座れるように足元をあけたりするようなデザインの場合、カウンターがどうしても不安定になります。そうすると、日々の暮らしの中で脚がぶつかったり、掃除機がぶつかったりして、いつのまにかガタつきが出てくることもあります。

カウンターの高さに対して奥行が深く、キッチンとダイニング両方から使えるようなどっしりしたカウンターであれば、固定しないで置くだけでも大丈夫なこともあります。ですが、奥行が350~550㎜くらいの薄型のカウンターの場合は、地震などで転倒する可能性もあります。

また、引き出しがたくさんある食器棚も兼ねたつくりの場合、固定していないと、引き出しの重さで転倒する可能性も出てきます。ですので、引き出しが多い形の場合や奥行が短い場合は、床や壁に固定したほうがいいと思います。

つくりつけ家具のおかげで家が早く売却できたケースも

「模様替えをしたくなったときに移動したいので、アイランドカウンターを固定しないでほしい」と希望されてつくったこともありましたが、数年後に訪れたときに移動していたお宅は今のところ見たことがありません。また、引越し先にアイランドカウンターを持ち込んでみたものの、新しい間取りに合わず、手直しが必要になり、追加で費用がかかってしまうというケースもいくつかありました。

アイランドカウンター内部

余談ですが「アイランドカウンターのおかげで快適に過ごすことができたので、家を売る際そのまま残していくことにしました。すると、アイランドカウンターを魅力に感じてくれた方が、すぐに購入を決めてくれました」といううれしい報告を受けたこともあります。

アイランドカウンターを固定することで床や壁に穴をあけなければならない、と考えるのではなく、しっかりと固定してベストな形で使う、と考えたほうがいいと私は思います。そのほうが納得して使用できますし、結果として満足度が高くなるのではないでしょうか。

ダイニングテーブルは固定せずフレキシブルに使えるほうがいい

ダイニングテーブル越しに見たアイランドカウンター

ダイニングテーブルをアイランドカウンターやキッチンに固定したいというリクエストをいただく機会もたまにあります。でも、個人的にはテーブルはフレキシブルに移動できるほうがいいと考えています。

年月とともに、テーブルに集う家族構成も変わってきますし、テーブルの使用目的も変わってきます。固定してしまうと、どうしても変化に対応しにくくなってしまいます。家具屋としては、ダイニングテーブルは固定せず、ライフスタイルや家族の関わり方の変化に柔軟に対応できるものであってほしいと、思っています。

●教えてくれた人/今井大輔さん
暮らしに寄り添うオーダーキッチンやオーダー家具を手掛ける家具工房「フリーハンドイマイ」代表。神奈川県高座郡に工房とショールームがある