窓を設置する方位によって、通風や採光には大きな違いが出てきます。各方位から得られる風や光の特徴を知ることは、快適な暮らしの近道に。家づくりの大切な要素である窓の役割やプランニングについて、建築家・大島健二さんが詳しく解説してくれました。家を建てたい人、リフォームを考えている人に役に立ちます。メリットや注意点ついて、しっかり学びましょう。
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窓のプランニングは眺望の有無がカギみんなが好きな【南】は、大開口+高性能で快適に敬遠されがちな【北】も天窓や間接光で魅力的に【東】から差し込む朝日を暮らしに上手に取り込む嫌われものの【西日】もインテリアの要素に窓のプランニングは眺望の有無がカギ
窓は、その取り入れ方によって、暮らしの快適さや家のデザインなどに影響を与えます。たとえば、居室の壁に窓をたくさん取りつけたいと思っても、それでは家具の置き場に困ってしまいます。
窓をプランニングする際に重要なのは、窓の数ではなく、採光や通風など、「なんのために必要な窓なのか」を考えること。その考えを導くためのヒントとして、まず家の周囲の眺望を確認してみましょう。家の中から眺めたい景色や見晴らしのよい場所があるなら、その方向に向けて、景色を楽しむための窓が欲しい(必要)ということがわかります。
そもそも窓は、太陽と密接な関係があるので、東西南北の方位によってもプランニングは異なります。そこでここからは、方位ごとに光の特徴や窓の配置などを見ていきましょう。イラストでプランニングの一例も紹介しているので、あわせて参考にしてください。
みんなが好きな【南】は、大開口+高性能で快適に
南側プラン例
【くつろぎの窓:大きな掃き出し窓から庭を眺めてリラックス。ロールスクリーンを使って日差しや外からの視線を調節します】
もっとも効率よく採光を確保できるのが南側です。家族がくつろぐリビングを配置することが多く、なにより日差しをたくさん取り入れたいと望む場合がほとんどです。そのため、窓は大きくなりがちに。
しかしながら、直射日光が差し込む時間帯など一日の中でも光が大きく変化するので、まぶしさや暑さを感じることも。それに備えて、ロールスクリーンなどを室内側に取りつけ、光を制御できるようにしておきましょう。室外側の工夫としては、庇(ひさし)を取りつけるのも有効です。夏至と冬至の入射角度を考慮して設置すれば、夏は直射日光を抑え、冬はより多くの光が取り込めます。
窓のサイズが大きくなるということは、外気温の影響も大きいので、断熱性能の高い窓を選んでください。あわせて防犯面にも配慮を。割れにくい防犯ガラスを取り入れるのもいいでしょう。外からの視線が気になる場合は、ブラインドやカーテンで視線をさえぎってください。
さらに、南側の庭にアウトドアリビングとなるデッキを設ける場合は、床がフラットな掃き出し窓を選ぶといいでしょう。リビングとデッキの行き来がしやすくなり、庭がより身近に感じられます。
また、地域などにもよりますが、風は南から北に通り抜けることが多いので、自然の力を生かして採風できるように、開閉タイプの窓があると通風や換気に役立ちます。
敬遠されがちな【北】も天窓や間接光で魅力的に
北側プラン例
【集中の窓:腰高窓から入る間接光や天窓からのやわらかな光で、落ち着いた雰囲気の書斎。天窓には開閉がラクな電動式ロールスクリーンを】
南側とは真逆の性質を持つのが、北側の光。影ができにくく、一日中安定した光が得られるので、絵を描くアトリエなど、集中して作業を行う場所におすすめです。こもり感のある4畳半の部屋も、落ち着いて過ごせますよ。
窓の種類で考えるなら、天窓(トップライト)もよし。ほかの種類の窓に比べて採光量はおよそ3倍。日が差しにくい北側も、まるで光の井戸のように穏やかな日差しが降り注ぎます。ちなみに天窓を南側につけると、日が入りすぎるのでおすすめできません。
ほかの採光方法としては、隣家や塀などに日光を反射させ、間接光として取り込む方法もあります。とはいえ、夏至の頃は朝夕に直射日光が回り込みます。それに備えてカーテンなどの日よけ対策は忘れずに。また、北側の窓は、南から取り込んだ風の出口にあたることも多いので、通風・換気の面から開閉式の窓を備えておくといいでしょう。
じつは北側の窓からは、庭がきれいに眺められます。部屋から順光で見ることができるので、木々の葉が光に反射し、みずみずしく感じられますよ。すてきな庭をつくって、借景を楽しむピクチャーウインドゥを取り入れるのもいいですね。
【東】から差し込む朝日を暮らしに上手に取り込む
東側プラン例
【おはようの窓:洗濯物にも朝日が当たるように、高窓や縦長のスリット窓を配した洗面室。窓の配置によって外からの視線もさえぎれます】
東側の魅力は、太陽の光を真っ先に取り込め、朝日を浴びながら一日のスタートが切れること。
そんなメリットを効率よく生かすには、キッチンや洗面室、ランドリールームなどの水回りがぴったり。とくにランドリールームは、南からの日差しを待つことなく、朝から洗濯物の室内干しができます。
朝日とともに活動したい人は、寝室もよいでしょう。しかし、夏は日の出が早く、光が入りすぎるので、朝早くから明るく暑くなることも。ブラインドなどの日よけ対策を忘れずに。また高窓(ハイサイドライト)は、腰高窓などに比べて日が入る時間が早いので、避けたほうが無難です。
嫌われものの【西日】もインテリアの要素に
西側プラン例
【おかえりの窓:スリット窓から差し込む夕陽を壁に映し、デザインとして取り込んだ玄関ホール。時間や季節の移ろいを味わえます】
西側は、太陽の光が水平に近い角度で入射してくるので、夏の西日はまぶしく暑く感じられ、敬遠されがち。しかし、夕日に空が赤く染まる様子は、なんとも神秘的で美しいもの。この美しい夕焼けを眺めてくつろぎたいなら、ピクチャーウインドゥを取り入れるのもいいでしょう。
さらに上級テクニックとしては、縦に長いスリット状の窓を取りつけ、白い壁に差し込む夕日を反射させて幻想的な雰囲気を楽しんで。西日の強い直射日光を抑えたい場合は、高窓や地窓(床のすぐ上に取りつけた窓)の活用も効果的。適度な光の量となって、空間を心地よく照らしてくれます。
いずれの方位でも、暮らしの快適さとともに、外観デザインにも気を配ることを忘れないでください。
イラスト・取材協力/大島健二(OCM一級建築士事務所)