この一年で大きく変わった暮らし方。コロナウイルスの流行で誰もが生活の仕方、仕事の仕方、人とのかかわり方など大きな影響を受けています。「家の間取りを考える上でも、これまで以上に必要性が高まりつつある3つのスペースがあります」と話すのは、住宅を専門としている一級建築士の入部亜佐子さん。その3つとは、「室内のランドリースペース」「パントリー」「玄関土間の収納」だそう。理由を詳しく解説してもらいます。
すべての画像を見る(全11枚)その1:室内のランドリースペースで安心、快適に家事をする
共働き、花粉症、洗濯の時間、プライバシーなどさまざまな生活スタイルから、バルコニーではなく室内干しのニーズが急上昇しています。 衣類乾燥機や換気暖房設備搭載の小部屋を利用したり、2階の日当たりの良い一角に設けたり。人目を気にせず好きな時間に干せて、帰りが遅くなっても雨が降っても、慌ててしまう必要のないランドリースペースはとても便利です。
そのランドリースペース、どこに配置するかで使い勝手が変わってきます。
クロゼットの近くに設ける
ファミリークロゼットや寝室の
ウォークインクロゼットの近くにランドリーコーナーを設けた例。洗濯時には時間に余裕があるけど、しまうタイミングには疲れてしまっていてなかなかしんどい、という生活をしている人向けのプランです。とにかく、しまう場所の近くだと片付けるのもラクです。
洗濯機のそばに設ける
洗濯機を置いたランドリールームの隣に洗面脱衣室を設けた例。
こちらは干すのがラクなプランに。洗濯物は干す前が水を含んで一番重いので、その持ち運びの距離が短いほうがトータルの労力は少なくなります。
朝の忙しい時間に、慌てて洗濯をするご家庭にはこちらのほうが向いています。洗面スペースにも近く、身支度を整えながら洗濯終わりを待てるので、時間に無駄がなく便利です。
ランドリースペースとウォークインクロゼットを近くに配置
脱衣室兼ランドリーとウォークインクロゼットを一直線に配置したプラン。
こちらは、洗う、干す、しまうといった洗濯作業が1か所ですみ、洗濯動線という面から考えると理想的な間取りです。 ハンガーに干してそのままクロゼットにしまうスタイルだと、さらにたたむ手間もなく、洗濯ストレスから解放されます。
その2:備蓄可能なパントリーで、災害や自粛生活に備える
大物キッチン家電や、食品、飲料、鍋などの収納はもちろん、家事スペースを兼ねるなど、キッチンそばにあると便利で片付くパントリー。 ポストに入っていたDMの一時保管場所に、あるいは、災害や自粛生活に備えるための備蓄品のスペースとしてなど、多様に使うことができます。
保存のきく食材をある程度確保しておくことで、緊急事態宣言やリモートワークで外に出られない時も安心して過ごせます。 長期で保管するなら、直射日光のあたらない北側に設置するのがおすすめです。
こちらは、キッチンの横にパントリーとして使える収納をつくった例。
このように広いスペースが取れず、ウォークインにできなくても、小さなスペースを天井まで有効活用することでかなりのストックができるので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょう。
その3:玄関の土間収納があれば趣味も充実
もともと靴やベビーカーなどをしまう場所として人気があった土間収納。コロナによる自粛生活が求められる今、自宅BBQやソロキャンプなど、個人で楽しめる趣味を持たれる方も増えてきました。テントやグリル、炭やクーラーボックスなどしまいたいものも増加傾向です。
そして帰ってきた時のコートかけ、アルコールスプレーの置き場とマスクを捨てるコーナー、さらに小さくてもいいので、石鹸で手洗いができるスペースがあるととても便利です。
玄関に土間収納を配置し、コートかけや手洗いコーナーもつくった例。
家族と安心して接するために、玄関近くで除菌ができる仕組みは、これからの家づくりには必要不可欠になってくるでしょう。
また、防災面においても、パントリーに置く非常用持ち出し袋を土間収納にもセットしておくと、ものの散乱などでどちらかにアクセスできない状況になった場合にも安心です。
今回の記事で紹介したランドリースペースとパントリー、土間収納の3つのスペースを確保した間取りの一例です。暮らしやすい動線と、ウイルスや災害に備えられる工夫が取り込まれています。新しい生活様式へ備えた家づくりの参考にしてみてください。
●教えてくれた人/入部亜佐子さん
一級建築士。「暮らし×デザイン×性能」を考えた家づくりを得意とする。大学を卒業後、ゼネコンや設計事務所で設計を担当。子育て期間に5年ほど過ごしたイギリスでの生活が転機になり帰国後住宅専門の建築士に。2011年から住宅会社・ゼスト倉敷で100件以上の新築、ノベーションを担当。2021年2月に立ち上げた住宅の設計やデザインを手掛ける会社「ブルック」の創設メンバー