室内の間取りはもちろんのこと、家の外回りのプランニングも、暮らしやすさを左右する大事なポイントです。たとえば、道路から玄関まで気持ちよくたどりつける通路(アプローチ)、室内に光を導く仕組み(ライトコート)、生活の場を豊かに広げるスペース(テラスやデッキなど)といったものにも注目を。暮らし心地をアップさせるために知っておきたい外部スペースには、どんなものがあるのか、ひとつずつ、わかりやすく解説します。

外部スペースの名称
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目次:

街に対する印象を変える外観まわり室内に心地よい光をもたらす外空間暮らしの場を豊かに広げるスペース外空間が暮らしを快適にサポート

街に対する印象を変える外観まわり

建物の外観は、街並みを形成するもののひとつ。住む人の個性を表しながらも、街にとけ込むデザインが理想です。また、訪れた人を導き入れる通路や玄関まわりも、家の第一印象を決定づける大事な要素に。
まずは、建物の外観まわりに関する空間と、知っておきたいワードを解説します。一番上のイラストも参照を。

アプローチ

道路から門、玄関に至るまでの通路とその周辺をアプローチといいます。通路としての快適性や、建物への導入部としての演出性を求められるほか、防犯面の配慮も不可欠です。

ポーチ

一般的に本屋根とは別の庇や屋根を持ち、建物本体より突き出した玄関部分を指しますが、アルコーブ状(この場合、建物内部にへこませて設けた空間)の玄関部分も含めてポーチと呼ぶこともあります。

ピロティ

建物の1階につくられた壁のない吹き放しの空間で、柱だけで支えられているところ。ピロティ部分は駐車場などへの利用が多く、水害にさらされがちな沿岸部の住宅に向いています。

キャンティレバー

キャンティレバーのある家

梁やスラブなどの部材の片側だけが固定されて建物の重量を支え、もう一方の側が固定されず完全に自由になっている片持ち構造のこと。「片持ち梁」ともいいます。 設計/石井大+井上牧子

ファサード

建物を正面から見た外観のことをファサードといいます。一般に玄関のある面を指しますが、それ以外に外観として重要な面があれば、側面あるいは背面をファサードと呼ぶ場合も。

室内に心地よい光をもたらす外空間

たとえば住宅密集地で、すぐそばに隣家があって大きな窓がつくりにくい場合、建物の真ん中に中庭をつくって採光を導くプランがあります。そのほか、地下につくったり、浴室に隣接させたり、暗くなりがちな空間に光を採り入れる方法も。どんなスペースがあるか、解説します。

ライトコート

ライトコートのある家

中庭の一種で、建物の中心部分に採光や通風を得る目的で設けた吹き抜けスペースのこと。浴室などもライトコートに面して設置することで、通常よりも大きな窓をつけて開放感を獲得できます。採光性がいまひとつの敷地の建築物に特に有効。「光庭」ともいいます。 設計/長浜信幸

コートハウス

コートハウス

建物で囲まれた中庭(コート)のある住宅のこと。中庭は外部空間から完全に遮断され、開放されながらプライバシーを守ることができます。

コートハウス

建物内に採光や通風を確保する手段としても有効。建物の外側は開口を最小限とするため、セキュリティ上の利点も大。通常、建物と塀は一体化してつくられます。 設計/米倉拓生+近藤貴美子

パティオ

本来はスペイン・アンダルシア地方の住宅に多く見られる中庭のことで、床にモザイクタイルを貼ったり噴水を設けたりと、装飾性の高い外部空間のことです。現在では、建物に囲まれた外部スペースを総称してパティオと呼ぶのが一般的に。

ドライエリア

ドライエリアのある家

地下や半地下のある建物で、採光や通風、防湿を目的とし、建物の周囲に沿って地面より深く掘られた空間。地階からはドライエリアを庭のように使用でき、地上階と同様の居住性をもたらします。 設計/藤井兼祐

バスコート

バスコートのある家

浴室に隣接して設けられた屋外スペース。風呂上がりの憩いの空間で、建て込んでいる場合は高い塀などで覆うと、プライバシーが保てます。 設計/鈴木宏幸

暮らしの場を豊かに広げるスペース

たとえばリビングやダイニングからそのまま出られる外部空間があると、お茶を飲んだり食事をしたり、読書をしたり、セカンドリビングとしても使えて、暮らしがより楽しく!そんな外空間は、つくり方によって名称もさまざま。どんなものがあるか見ていきましょう。

バルコニー

2階以上の階で床から張り出し、室内から出られる外部スペース。手すりやフェンスで囲まれ、屋根はありません。上階にバルコニーがあれば、それが屋根代わりに。

テラス

建物の前面に張り出した、室内から直接出入りする、地面に接した外部空間。地面の一部を高く盛り、表面をレンガや敷石、板、タイルなどで仕上げます。屋根がないのが一般的。

デッキ

建物の前庭につくる外部スペース。板を張ったものは「ウッドデッキ」と呼びます。テラスやベランダと同義で使われることも。

ベランダ

洋風の建物の外に張り出した、庇のついた外部スペース。

外空間が暮らしを快適にサポート

家事のしやすさや、室内の過ごしやすさもまた、外部スペースのつくり方に影響されます。こんなスペースがあると快適!

サービスヤード

キッチンや勝手口の付近に設けた家事用スペース。物干し、荷物やゴミの一時的な置き場などに用います。キッチンが2階の場合、サービスバルコニーを設けることが多いです。

パーゴラ

つる系植物などをはわせる、格子状などに組んだ棚。夏は日よけになり、また角度によっては外部からの目隠しとしても機能します。

家は、建物だけではなく、そのまわりの空間もあわせた敷地全体をプランニングすることで、より快適に暮らせる住空間が実現できます。「外構はあとまわし」にせず、最初の計画段階から一緒に考えていきましょう。

●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する

イラスト/三上数馬