●夫の散財が決め手となり離婚を決行

そんななか、ある事件が決め手となり、酒井さんは離婚を決断します。

元夫は高収入だった割に、毎月渡してくれる一家4人分の生活費は、住居費を除いた10万円。「たりないから、もう少しください」とはなかなか言い出せない酒井さんは1円単位で細かく家計簿をつけ、生活をきりつめていました。

夫は貯めていてくれているはずだ、と信じていて、生活をきりもりしていたのです。ところがある時から、夫の口座からマンションの管理費が引き落とし不能になり始め、息子の学納金まで「おやじに払ってもらってくれ」と言い出す始末。挙句には、「通帳を失くしたから再発行してくれ」と――。そこで銀行に行くと、すべての預金口座が赤字だったことが発覚します。

「夫はいろんなところに騙されたりして給与をつぎ込んでいたんです。もうほとほと愛想が尽きて、『お義父さん、今こういう状態になっているから、もう卒業させてください』と切り出し、離婚に至りました。正直、当時は『本当に死んでくれたらどんなにラクになるだろう』とばかり思っていました。彼が死んだら生命保険が下りるし、マンションにもそのまま住めますから…。でもこう思う自分自身も嫌だった。別れた方が人間としてマシだと、踏んぎりがついたんです」

玄関の女性を見る男性後ろ姿
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幸いにも、当時高校生の長男、中学生の長女は両親の離婚に賛成し、ついてきてくれることに。父の危うい状態、それに悩まされる母の姿を長年見てきたため、「離婚したら貧乏するよ」と言っても、「もういいよ」と受け入れてくれたのです。

とはいえ、長年住んできた高級分譲マンションから、いざ小さなアパートへと移り住むと、長男は「こんな貧乏初めて知ったよ」と辟易。一家3人は、そこから厳しい現実に直面するようになります。それでも、離婚してよかったと感じている酒井さんたち。

「娘は、『離婚してからのお母さん、全然違うよ。すごく明るくなった』といいます。実際、体も見違えるように元気になりました。19年も我慢してしまいましたが、本当に合わないと思ったら早く別れた方がいい。それが私の結論です」

◆インタビュー後編はこちら◆

19年間の専業主婦をへて離婚。50代から始めた一人暮らし「今が一番幸せ」

夫との関係に行きづまっても、子ども二人を連れて離婚となると、踏み切れない人は多いでしょう。それでも…