バルコニーからの緑豊かな眺望が心地よい、昭和55年築の大規模団地の一室。約77㎡の空間を450万円というローコストでリノベーションし、夫妻と猫がそれぞれのペースで穏やかに暮らせるSOHO住宅へと生まれ変わりました。
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緩やかに仕切られたLDKには家族の「お気に入りの場所」がtoolboxのパーツを使いコストダウンを図ったキッチン玄関はたたき部分を大幅に拡張し、夫のワークスペースを実現サニタリーはミニマム&レトロ感をプラス間取り(リノベーション前後)緩やかに仕切られたLDKには家族の「お気に入りの場所」が
夫は建築家、妻は書道家のため、それぞれのワークスペースを設けながら、仕切りは少なめにして全体を緩やかにつなげた長久保邸。猫も含めた家族がそれぞれにお気に入りの場所をもち、マイペースに暮らせる空間になっています。
家族みんなのくつろぎの場所であるリビングダイニングはラワン合板の壁で緩く仕切り、奥行きと変化を演出。壁と同じく床材もラワン合板を使用し、ドイツの自然塗料メーカー「AURO」のワックスをDIYで塗装しました。木目に若干の色味を加えて、ハーフマットな仕上げに。
ラワン合板の壁の先はリビング。窓際にはベンチにもなる本棚を設けました。ベランダに置いた植物の鉢部分を隠し、窓辺の景色のごちゃつきを整理する役割も担っています。
「設計を考えるうえで重視したかったのは、窓からの眺めのよさや風が気持ちよく抜けることなんです」と夫。
ダイニングの奥はキッチン。間仕切り壁の上部には、団地らしいすりガラスをそのまま残しました。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫(52歳)、妻(49歳)、猫
▼リノベーションをした理由
「建築家である夫が設計した家に住みたい」という妻の長年の夢があり、リノベーションを前提に高齢になっても快適に住むことができる物件を求めた。コストに加え、眺め、光、周囲の環境などを総合的に気に入り、以前の住まいのオーナーチェンジをきっかけに購入とリノベーションに踏み切った。
▼建物の築年数
39年(昭和55年築)
▼住宅の面積
専有面積/77.11㎡
toolboxのパーツを使いコストダウンを図ったキッチン
以前は壁紙とタイルが貼られていたキッチンの壁は、すべてはがして現しにしました。壁に残る接着剤の跡は独特の色と質感でヴィンテージ感があります。使いやすい位置にオープンな棚を取り付け、その下を黒いタイルで仕上げました。
ステンレスのワークトップは建材やパーツを扱うtoolboxで購入し、コストダウンのため自ら発注して搬入。ベースの部分は造作し、調理器具のほかゴミ箱なども収納できるように工夫しています。レンジフードもtoolboxのもの。
玄関はたたき部分を大幅に拡張し、夫のワークスペースを実現
玄関には傘やアウトドアグッズも収納できるように、やや大きめの下駄箱を造り付けました。
その玄関のすぐ隣は、夫のワークスペース。窓からの景色が引き立つよう、壁を青みのあるグレーに塗装しています。
玄関はたたき部分を大幅に拡張し、自転車や植物、冬は石油ストーブを置くなど、何かと重宝しています。
和室だった空間はほぼそのまま活用し、妻の書斎と収納スペースに。有孔ボードを取り入れた収納棚を造作して緩やかに場を分けました。
窓際にローテーブルをしつらえ、読書や作品の制作に集中できる空間になりました。
サニタリーはミニマム&レトロ感をプラス
洗面室の壁もキッチンと同様、壁紙とタイルをはがして現しにし、下部を黒いタイルで仕上げました。シンプルな洗面ボウルとミラーキャビネットのみでミニマムに。天井は現しにしたあと、DIYでグレーに塗装しました。
サニタリー入り口のドアは、有孔ボードを使ったオリジナル。レトロな「National」のスイッチプレートは既存をそのまま生かしています。
「耐震性などのインフラ面はもちろんですが、老後の暮らしも考えて予算的に無理をしないことが条件でした」と夫。自らで設計するうえでイメージを最も実現しやすいという理由で団地を選択し、SOHOへとリノベーションをしました。
窓の外には自然を感じながら、夫妻と猫がいくつもの「とっておきの場所」でゆっくりくつろげる暮らしを送っています。
間取り(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
設計/長久保健二設計事務所
撮影/山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.33」取材時のものです