自らの収納ノウハウを詰め込んだ「収納御殿」の実現を目指し、リノベーション専門誌『リライフプラス』の連載「収納王子コジマジックの家づくり武者修行!」でも修業を続けてきた収納王子コジマジックさん。2019年7月末、ついに東京・目黒区内の閑静なエリアで理想の土地を入手。予算は土地+3階建てで約1億円。100件以上の土地を見学して「初めてピンときた!」という物件を手に入れ、建築会社も決定。いよいよ間取りを考える段階に突入します。コジマジックさんは「家族」「キッチン」「子育て」の3Kをキーワードに、プランを構築したと言います。建築会社リガードさんと一緒に検討を重ねに重ね、考えた間取りは……。ファーストプランと、たくさんのこだわりを反映させた完成プランを紹介します!
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まずは叩き台になったファーストプランを拝見!完成プラン公開!1階は家事がスムーズにこなせる工夫が満載2階は妻(キッチン)と子ども(リビング学習)が主役3階はゲストルームを追加し、必要な部屋数をゲット!完成予定のパース図をお見せします!まずは叩き台になったファーストプランを拝見!
2019年6月からスタートした設計作業。コジマジックさんと奥さまからの要望をもとに、建築会社リガードさんからファーストプランが提出されました。その構成を紹介すると、1階が玄関、車庫、書庫、ファミリークローゼット、サニタリー。2階がLDKとトイレ、そして3階が寝室と子ども室となっています。
フロアごとに細かく見てみましょう。
1階のファーストプラン
1Fのファーストプラン
コジマジックさんが最初から要望していたのは家族みんなの衣類をしまえるファミリークローゼット。というのも現在お住いの賃貸の戸建ては、3階の寝室にご夫婦の衣類、2階の子ども室に子どもの衣類を収納。着替えする際はリビングで行うため、衣類がどんどんリビングに溜まっていくそうです。
「できればネットカフェ程度のスペースでいいので、自分専用の書庫がほしいです」(コジマジックさん。以下同)夜遅く帰ってきてデスクワークすることも多いらしく、最初は3階に作ろうかと思ったのですが、ガタガタ音を立てて、寝ている家族を起こしてしまっては気の毒。その結果、1階の玄関に近い場所に配置することに。この時点では3.5畳とネットカフェよりは贅沢(?)なスペースです。
家族4人で75足と靴が多いコジマジック家。シューズインクローゼット(SIC)は玄関土間の空間と仕切りたい、などのリクエストも。
なお収納部は、玄関収納・SICをはじめファミリークロゼット、テレビ周りやパントリーなど、すべてコジマジックさんと建材メーカーDAIKENとのコラボで開発された、機能的かつアイデア豊かなシステム収納を活用しています。家は「収納王子」の仕事の集大成でもあるのです。
2階のファーストプラン
2Fのファーストプラン
2階は、21.8畳の広さを獲得したワンルームのLDK。北側にアイランドキッチンを設置し、対面の南側に向かってダイニング、さらにリビングが続くプランです。「キッチンのパントリーは、もっと広くしてほしいとお願いしました」。そのためトイレや手洗いコーナーは3階に移動することに。
ダイニングはキッチンと向かい合って会話がはずみそう。またダイニングの壁沿いには、お子さんたちが勉強をするためのデスクコーナーが。LDに学習デスクを組み込むことで、奥さまが家事をしながらでも見守りやすい配置となっています。
「基本的に子どもが部屋にこもらない間取りを要望。だから学習デスクもLDに同居させました」。
リビングは、テレビやソファの位置、バルコニーの有無、さらに吹き抜けの位置を調整することに。「長女がピアノを習っていて、小学校に入るまでレッスンが続いたらピアノを買ってあげる約束。そのため、ピアノの置き場所の確保に苦労しました」。
3階のファーストプラン
3Fのファーストプラン
3階は主寝室に2つの子ども室、さらに中央には5畳ほどのフリースペースが。
子ども室は「極端に言えば、夜寝るスペース」ととらえ、それぞれ4畳と最小限のスペースになっています。
「狭くてもいいから追加で両親や友人が泊まれるゲストルームをつくれないかとリガードさんに相談しました。年に何回かのことかもしれませんが、ここはぜひ!と。安心して泊まってもらえるスペースをどうしても確保したかったんです。もちろん使わない時のことも考え、雨の日は洗濯物が干せるようにしようと思います」。
この要望に応えるため、主寝室と子ども室2室、吹き抜け、収納、さらに追加となったゲストルーム、2階から移動させたトイレと手洗いコーナーのスペースの確保とやりくりが始まります。「なんとかうまく全部収められたらと願いました」。
完成プラン公開!1階は家事がスムーズにこなせる工夫が満載
最初のプランから打ち合わせと検討を重ね、約2か月後にプランが完成!1階から3階まで、構成要素としては大幅な変更はないものの、それぞれの要素の大きさやレイアウトはずいぶん変わったようです。
ではその中身を見ていきましょう。
1Fの完成プラン
玄関から奥の洗面室まで伸びる廊下で東西を仕切り、西側スペースをゆったりと確保。北側から順に、SIC、書庫、さらにファミリークローゼットを配置しました。SICは玄関土間に横付けしつつドアと壁で仕切ったため、玄関スペースはスッキリ。突然の来客もスマートに迎えられます。
コジマジックさん用の書庫は、当初の3.5畳から2.1畳と大幅に縮小!「2階のパントリーよりも狭くなってしまいました(苦笑)。でもL字型に組んだカウンターデスクの設置でPCやプリンターを置くことができ、効率よく作業ができそうです」。
書庫の南側がファミリークローゼット。最初のプランよりも面積を広げ、3面の壁をフルに活用して収納ユニットを設置。家族みんなの衣類を片づけられるパワフルな収納です。
「帰宅後はここでルームウェアに着替え、洗濯物を洗濯カゴに入れ、手洗い・うがいを済ませ、2階のLDKへ上がることを習慣に。そうすれば衣類やカバン類が2階・3階に散乱することを防ぐことができます」。
ファミリークローゼットの中央には、キャスター付きの作業台を設置予定。「作業台はテラスから取り込んだ洗濯物を畳んだり、アイロンをかけたりするのに活用。下部はアイロンやアイロン台の収納に活用します」。作業台は、着替えの衣類をちょっと置くのにも便利そう。コーナーには全身が写るミラーやネクタイ収納も設置され、コーディネートもラクです。
さらにファミリークローゼットが水回りと最短の動線で結ばれたのも要注目です。
水回りはファミリークローゼットの南側に位置。まず脱衣スペースと洗濯機コーナーを兼ねる洗面室があり、洗濯機のすぐ横にバスルームが。また洗面室から外部に出られる設計で、そこは外干しができる便利な庇付きのテラス。テラスは最初のプランにはなかったスペースです。ファミリークローゼットと洗面室には、部屋干しができるよう天井面に収納できる物干し竿(ものほし上手)も設置。
「今住んでいる家は2階に洗濯機、3階に物干し場があるため、妻は洗濯の度に重たい洗濯カゴを持って行ったり来たり。そこで『①洗濯をする ②干す ③アイロンをかける ④たたむ ⑤しまう』という一連の動作を最も短い行動動線で実現してもらいました」。
2階は妻(キッチン)と子ども(リビング学習)が主役
2Fの完成プラン
2階は、用途としてはLDKのままですが、トイレと手洗いコーナーを3階に移動させたぶん、キッチンの面積が拡大。キッチンとパントリー合わせ、2階の1/3を占める広さを確保しました。「妻はとても料理好きで料理上手。できるだけ快適に調理できるよう、徹底的に話し合い、プランを進めました」。
キッチン本体はLDが一望できるアイランド型。背面には同じシリーズの家電収納、その横には冷蔵庫を配置しました。妻が買い物から帰って来たら「①冷蔵庫へ収納 ②食材を洗う ②食材を切る ③食材を調理する ④盛り付ける ⑤食卓へ運ぶ」という行動動線を考えたプランに。さらに建物の南北方向の奥行きを生かし、裏側にゆったりとパントリーを確保しました。北側壁面の間口約3.5mを使い、収納ユニット(DAIKEN)を設置。食品や飲み物のストック、使用頻度の低い食器や調理家電など、大容量に収納できます。
キッチンとパントリーはぐるりと回れて、どちらからでもアクセスすることでき、モノの出し入れも簡単に行えます。
なお、北側は道路に面しているため、外からの視線を配慮して窓を作らず、その代わりパントリーの東側に大きな引き違いの窓を設置。これで大きな家具や家電の搬入も可能に。窓の外には電動シャッターを取り付け、台風やい大雨などの災害、プライバシーもしっかり守ることができます。
ダイニングは、子どもたちの学習スペースを当初と変更なく設置。その南側を、懸案だったピアノの設置場所に。ピアノはかなりの重量があるため、置き場所の床は構造材で補強する計画です。
最初の図面では、リビングの南東側にバルコニーを設ける設計でしたが、1階にテラスをつくるため、バルコニーはカット。フラットになった壁面を活用してテレビボード収納を設置し、南西側にソファを置く計画としました。
3階までの吹き抜けは、ソファの頭上になるよう変更。採光性もバッチリで、開放感いっぱいのくつろげるリビングになりそうです。
3階はゲストルームを追加し、必要な部屋数をゲット!
3Fの完成プラン
3階はゲストルームを追加することになり、ファーストプランとレイアウトが大きく変わりました。
まず、フリースペースを中心とした四角い空間はやや縮小。ここに3畳ほどのゲストルーム、2階から移動となったトイレ+手洗いコーナー、季節家電や客用布団が収納できるスペースを2つ組み込みました。
「ゲストルームはやや小さいものの、いい感じに収められて大満足。トイレもすぐそばなので、不自由なく過ごしてもらえると思います」。
なおゲストルームにも部屋干しができるよう天井面に収納できる物干し竿(ものほし上手)を2本設置。来客のない普段は室内干し空間として活用OK。さすがのアイデアが光りますね!
最初南側だった子ども室は、北側の主寝室と場所を入れ替え。ファーストプランにはなかったバルコニーと引き違い窓でつなぐことで、広さはそのまま、のびのびと過ごせるよう工夫しました。
部屋はしばらく大きな1室として使い、いずれ中央に間仕切りをつけて2室とする可変性をもたせています。「それぞれ4畳強の狭い空間なので、クローゼットの扉は3枚連動の引き戸(DAIKEN)を採用。3枚連動なら間口も広く取れ、ベッドがあってもモノの出し入れがスムーズにできます」。
主寝室は南側にレイアウト。最初よりもやや狭くなりましたが、吹き抜けと隣り合うことで、広がりを感じられる空間に。小ぶりなウォークインクローゼットを連結させたのも変更点です。
「それぞれの部屋はコンパクトですが、そのぶん2階で一緒に過ごせるようレイアウト。必要なスペースや収納をすべて組み込み、動線も快適にまとめ上げてくれたリガードさんに大大大感謝です!」。
完成予定のパース図をお見せします!
間取りをすべて紹介したところで、最後に気になる外観も公開しちゃいます。
ご夫妻が要望したキューブ型の外観で、デザインはシンプルモダンそのもの! 道路側からは窓が見えず、セキュリティ面も安心。質感の高い茶系の外壁が縦に入れたスリットとともにアクセントを効かせています。
リアルなパース図を拝見し、出来上がりがますます楽しみになってきましたね!
収納王子コジマジック
【一般社団法人日本収納検定協会 代表理事 小島弘章】 片づけ・収納・住まいに関する確かな知識と実績を持つプロフェッショナルでありながら、松竹芸能で25 年の芸歴を積んだ、主婦層に圧倒的な支持を受ける男性ライフスタイル系タレントのパイオニア的存在。収納に“ 笑い”を取り入れたセミナーが話題となり、年間講演依頼数は200本以上、著書・監修本は累計40万部を超える。“収育”を理念として掲げた日本収納検定協会を設立し、お片づけを楽しむ検定「収納検定」をスタートさせる。そのほか収納グッズ開発やマンションの収納監修など、日本や中国を中心に幅広く活躍中。
山田耕司=撮影 田中敦子=取材・文