転勤を終えて東京に戻り、そろそろ持ち家をと考えていたTさん夫妻。そんな時に友人から「よければ買わない?」と持ち掛けられたのが、この築13年のマンションでした。家を持つなら、好きなインテリアを実現できる中古×リノベーションと決めていた夫妻は、思い切って購入。リノベーションは空間社に依頼し、収納の充実や広々した玄関を希望。工事費740万円(税・設計料込み。施主支給分は別途)で、スッキリ整った開放的なLDKや快適動線、フレキシブルに使える土間のある住まいを実現させました。
大型収納のおかげで開放的になったLDK
すべての画像を見る(全12枚)約72㎡の空間は、ふたりで暮らすには十分な広さ。少なかった収納を充実させたことで、LDKはさらにスッキリと開放的になりました。
リビングにあった既存の収納棚は撤去し、壁の厚みを利用して書棚を新設。
大きめのソファを購入予定だそうですが、色違いのウェグナーのひとり掛けソファも空間によく溶け込んでいます。床はオーク無垢材で床暖房に対応。
木材の表面をリボス着色カラーオイルのグレー色でふき取り、インテリアの色彩トーンを調節しました。
料理好きな夫妻にふさわしく、家の中心はキッチン。シンクには質感が美しいステンレスを、そして床には土間と同じグレーのタイルを採用しています。
また、キッチンカウンターはリビングからの景観も意識して、シックなモザイクタイル貼りに。
元々の間取りでは収納の少なさが気になっていたというTさん夫妻。収納を充実させるために、キッチン側の一番長い壁面をフルに使えるように工夫しています。
壁一面にモルタルを塗り、上部は吊り棚のオープン収納、下部はIKEAのキャビネット収納を設置。一部がデスク仕様となっており、妻が5年前から始めた刺繍を楽しむ専用スペースに。刺繍を始めるとかなり集中するそうで、8時間連続で作業したこともあるそう。
吊り棚には、木工作家である妻の妹さんの作品や工芸品、民芸品が飾られています。味のあるまな板もインテリアに。旅好きな夫妻は「地方のものは、現地で買うのがわが家のポリシー」と話します。
寝室は小さく、収納は大きく
T邸のウォークインクロゼットは寝室と一体化。寝室は寝るだけと割り切って面積を減らし、そのぶんウォークインクロゼットを加えました。
「既存のウォークインクロゼットよりうんと広くなって大満足」と妻。
「共働きの夫妻のために寝室をウォークインクロゼット、廊下を回遊できる間取りとしました」という空間社の大島さん。寝室から見てウォークインクロゼットは奥行きが深いので、解放感は損なわれていません。
また、ウォークインクロゼット内の収納棚は施主支給しました。このウォークインクロゼットを充実させたことで、リビング収納を撤去でき、リビング・ダイニングを広く使えるように。
ウォークインクロゼットと廊下はアーチ型の出入り口でつなぎ、建具は省略。「通りやすく、寝室への出入りはこちらの方が多いです」と夫。
フレキシブルに使える開放的な土間玄関
玄関を入ると、スコーンと広がる土間空間。「明るく広々とした玄関で迎えられたい」と夫が要望し、玄関脇の洋室空間を取り込んで広げました。
ルーバー扉の大型収納の中には、マラソン、登山、テニスなど夫の趣味の道具がどっさり。スーツケースもこちらに収めており、旅行の支度をする際はこの広々スペースが役立っているそう。
「天井下に渡したガス管は懸垂用。天気の悪い休日など、これで鍛えています!」と夫。
靴箱は足場板を張っただけのオープン収納にすることで、解放感に貢献しています。
ウォークインクロゼットの向かいに位置するサニタリー。洗面台は既存がキレイで十分使え、大きなミラー扉の収納も便利だったため、水栓だけ交換して利用しています。
手元の壁にはタイルを新しく貼ることで、おしゃれ度をアップ。また、壁面のニッチ収納は、今回新しく設けました。
土間を広く取るために、北側の洋室を取り込むことに悩んだというTさん夫妻。
「ゲストが来て泊まる部屋がないのも困るな、と。でも泊まるのが年に数回なら、リビングの一角を布で仕切って使う手がある。利用頻度と優先順位を考え、土間への変更を選びました」とのこと。
優先順位を反映させたT邸には、機能性だけでなく、たっぷりと余裕ある空間も生まれました。
設計・施工 空間社
撮影 遠藤 宏
※情報は「リライフプラスvol.20」取材時のものです