●やりたいことを続けることで人生が開けてゆく

色とりどりの花たち
撮影前日にお誕生日だった若宮さんのもとには、全国からお祝いが。玄関には色とりどりの花たちにまじって、心のこもったメッセージが飾られていました
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60代からパソコンを学び、80代でゲームソフトまで開発して世界に羽ばたいた若宮さん。だれもが彼女に会いたがり、話を聞きたがります。
コロナ前には自宅でパソコン教室を開いてシニアにパソコンの楽しみ方を伝授したり、全国各地から招かれて講演をしたり、取材を受けたり。本だって数々執筆しました。現在は日本政府からの要請で、デジタル改革ワーキンググループのメンバーとして平井卓也デジタル改革担当大臣のお手伝いをしています。

「日経新聞の記者さんに笑われたんですよ。普通はリタイアして年金生活になると納税額もどんどん収束していくのに、80代になってから青色申告するようになるなんて珍しい、って(笑)」

それでも若宮さんの暮らしぶりはいたって質素です。
というのも「興味のあること以外はどうでもいい」からなんだとか。

「食道楽でもない。食器集めが趣味なわけでもない。オシャレな暮らしにも興味なし(笑)。だからどうでもいいことにはお金は使いません」

食器
野菜や鶏肉などを煮込んだスープは、小分けにして冷凍のつくりおきに。「その日の気分でおみそ汁にしたり、スープにしたり。手軽だけど栄養はとらないとね」。食器は軽くて丈夫なプラスチック製を愛用中

食器は「軽くて丈夫でラクだから」プラスチックのものを愛用。家具類は最小限なので、お掃除はルンバ任せ。食事はつくりおきのスープを冷凍しておいて、気まぐれみそ汁にしたりスープにしたり。
「駅前に住んでいるから、夕方デパ地下へ行くと、お惣菜が安くなるのよ!(笑)」

講演や執筆で稼いだお金はどうするのでしょう?

「コンピューター関係には惜しまず使います。YouTubeの撮影や編集の機材は最新のものを使いたいしね。最近はVR(バーチャル・リアリティ。仮想現実)にはまっていてね。ZOOMよりいいですよ!」

余ったお金は自らが理事などを務めるNPOや各種団体に寄付しています。

「お金だけ残しても仕方がない。行きたいところへ行き、会いたい人に会い、やりたいことができるだけの健康さえあれば十分。経済的には恵まれているほうでしょう。でも、お金持ちの家に生まれたわけではありません。たまたま、やりたいことを続けていたら興味を持ってくれる人がたくさんいただけ。そのことがお金を生むなら、もっと楽しく、コンピューターに親しむシニアが増えるように還元しなくちゃ」

若宮さんの「好奇心相応」は今も続いています。


<取材・撮影・文/浅野裕見子>

【若宮正子さん】

昭和10年、東京都生まれ。東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。定年をきっかけにパソコンを購入し、楽しさにのめり込む。シニアにパソコンを教えるうちに、エクセルと手芸を融合した「エクセルアート」を思いつく。その後もiPhoneアプリの開発をはじめ、デジタルクリエーター、ICTエバンジェリストとして世界で活躍する。シニア向けサイト「メロウ倶楽部」副会長。NPO法人ブロードバンドスクール協会理事。熱中小学校教諭。政府のデジタル改革ワーキンググループメンバーでもある。新刊に『

老いてこそデジタルを』がある