日本人女性がかかるがんのなかで、もっとも多いという乳がん。なんと、約12人に1人が乳がんになっています。でも、備えることでリスクを回避し、闘える病気でもあります。自分を守るために正しい知識を身につけ、積極的に検診を受けることが大事です。認定NPO法人乳房健康研究会副理事長・島田菜穂子先生に、乳がんの基礎知識について伺いました。

乳がん

正しい知識を得て、正しい検診を受けることが乳がんに備える第一歩

ここ数年、乳がんにかかる人が増えていることを知っていますか? 40代後半から50代前半にかかることが多かった乳がんですが、30代中盤からかかる人が急増。原因として、食生活の欧米化、女性の社会進出に伴う未婚や高齢出産、不規則な生活サイクルが挙げられます。

「同時に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌期間が長いほど、乳がんのリスクが高まることがわかっています」と、島田先生は話します。「以前は出産経験がない、閉経が遅いなどの女性に多いといわれていましたが、最近は不妊治療中の人も要注意です。女性ホルモン投与を受ける前に乳がんを発症していないか必ず検査を。医師と相談し、乳がんのリスクとのバランスを見つつ、不妊治療を行う必要もあります」。

乳がんは、日本人女性がもっとも多くかかるがん。しかし、亡くなる人の数は大腸がんや肺がんより少なく、死因としては5番目です。「乳がんは早期に発見し、適切な治療をすることで克服できるからです。欧米では減少しているのに、日本では乳がんで亡くなる方が年々増えているのは、症状が出てから治療を開始する方が多いため。2016年には、1万4000人を超える女性が命を落としています。自分の身を守るために、まずは乳がんを正しく知って、正しい検診を受けることが大事なのです」。

女性が罹患するがんの部位別順位は、乳がん、大腸がん、子宮がん、胃がん、肺がんとなっています。乳がんは圧倒的に多いですが、亡くなる人は大腸がんや肺がんよりも少ないのが特徴です。乳がんは、正しい知識と正しい検査方法で早期に発見できれば、命を落とさずにすむがんなのです。
※出典:がん情報サービス「最新がん統計」

乳がんから自分を守るためにできること

乳がんから自分を守るためにできることは? 予防とセルフチェック、検診、治療についての大事な知識をお届けします。

●近親者で乳がんにかかった人がいる場合は要注意。不規則な生活も見直して

血縁者ががんにかかっている人、さらに母親や姉妹に乳がんの人がいる場合は、遺伝的な要因で、乳がんにかかるリスクが高くなるため、20代から検診を受けるなど注意が必要。また、女性ホルモンのエストロゲンにさらされる時間が長いと、がんを促進することがわかってきました。つまり初潮が早い、出産経験がない、授乳期間がない、閉経が遅い、閉経後の肥満などで女性ホルモンの分泌量が増えると、リスクが高まることを意識して。過度の飲酒や喫煙もハイリスクになります。また、これらの因子が思い当たらなくても、不規則な生活によるストレスなども背景と考えられており、だれもが注意し、備えることが大切です。

●通いやすく設備と知識の整った乳腺の専門医で受診を

検診を受けるからには、初期の段階のがんも見つけるマンモグラフィーや超音波検査の設備のある医療施設を選ぶことが第一。乳がん検診をしているからといって、設備がそろっているとは限りません。「NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構」では、マンモグラフィー検診に欠かせない認定医師と認定放射線技師、認定施設を公表。この3つがそろった機関は「認定NPO法人乳房健康研究会」のHPに掲載されているので、通いやすい施設を見つけましょう。

乳がん検診・治療ができる病院は以下のウェブサイトから調べることができます。詳しく知りたいという人は、ぜひチェックしてみて。

認定NPO法人乳房健康研究会

乳がんによる死亡低下を目指しピンクリボン運動を展開する日本初の乳がん啓発団体。乳がんの検査設備が整った施設を紹介している。

日本乳癌学会

不安や戸惑いを払拭するため、専門医たちが検診や治療のための正しい最新情報を記載。認定施設や乳腺専門医のリストも豊富。

認定NPO法人J.POSH 日本乳がんピンクリボン運動

「受けよう乳がん検査、早期発見で笑顔の暮らし」を目指す啓発団体。マンモグラフィー検査機器を設置する医療機関のリストを掲載。