疲れが取れない、寝た気がしない、食欲がわかない…。だれもが覚えのある“夏のなんとなく不調“は、年齢による疲れではなく、じつは「熱あたり」が原因かも。近年の記録的な猛暑のなかで、多くの人が経験していながらもつい見過ごしてしまっているようです。体の熱問題に詳しい医師の谷口英喜先生と、「みんなで熱あたりしない夏」プロジェクトに取り組むダイキンの担当者・重政さんに、熱あたりの原因や症状、すぐに実践できる対策法やエアコンの上手な使い方を教えてもらいました。

あまりの暑さに食欲もなく、だるそうにする子ども…これ、「熱あたり」が原因かも
あまりの暑さに食欲もなく、だるそうにする子ども…これ、「熱あたり」が原因かも

ESSE読者もあるある!夏に感じる“なんとなく不調”

「朝からなんだか体が重い」「夜中に目が覚める」「家族のために食事を用意しても、自分は食欲がない」…そんな“夏のあるある”を、年齢による疲れのせいにしていませんか?

ESSE読者90名を対象にした「熱中症・熱あたり」にまつわるアンケート(2025年4月中旬実施・Web調査)では、「暑さによる体の不調」を経験している人が多数いることが明らかになりました。

頭痛や睡眠の質低下、倦怠感などがおもな症状で、「夫が夜中にこむら返りを起こした」「子どもの食欲が落ちて帰宅後すぐに寝てしまった」といった声もあり、家族の健康を心配する様子もうかがえます。

暑さで眠りが浅くなり、慢性的にだるくなることがありました」(30代)

「暑さで眠りが浅くなり、慢性的にだるくなることがありました」(30代)

「8月下旬の日中の暑さが続くなか、夫と庭の手入れをしたところ、体に熱がこもった感じに。ふらふらとしてめまいのような症状や頭痛が続き、なかなか疲れが取れませんでした」(40代)

「8月下旬の日中の暑さが続くなか、夫と庭の手入れをしたところ、体に熱がこもった感じに。ふらふらとしてめまいのような症状や頭痛が続き、なかなか疲れが取れませんでした」(40代)

実際に病院に行くほどではなくても、こうした不調が生活や仕事のパフォーマンスに影響を及ぼすことも。これらの症状の原因は「熱あたり」かもしれません。耳慣れない言葉ですが、果たしてどのようなものなのでしょうか。

夏になると3人に2人が経験する「熱あたり」とは?

2024年夏に熱あたりを経験したのは日本に住む人のうち、3人に2人が経験している結果に
2024年夏に熱あたりを経験したのは日本に住む人のうち、3人に2人が経験している結果に(ダイキン工業の「夏場の熱による体調不良に関する全国調査」より/2025年3月・Web調査)

「『熱あたり』とは、暑さが体に及ぼすダメージ全般を指します。食あたりや水あたりを起こすことがあるように、『熱』にあたる、つまり体に熱がたまり、うまく逃がせずにいることで体調を崩している状態を意味します。昨今の猛暑の影響で、熱あたりの経験者が増えています」

教えてくれたのは、体の熱問題に詳しい横浜市東部病院の谷口先生。実際、全国47都道府県の成人男女を対象とした「夏場の熱による体調不良に関する全国調査」によると、64.6%が「熱あたり」を経験したと回答。

さらに、経験者のうち66.6%が日常生活でのパフォーマンスの低下を感じていることがわかりました。

「人間の体は汗をかいたり血管を拡張させたりして体温を調整しますが、過剰な調整が続くと、自律神経に負荷がかかり、倦怠感や頭痛などの不調が引き起こされます。これが熱あたりの状態です」(谷口先生)

●倦怠感や頭痛、気分の落ち込みなど、「熱あたり」の症状はさまざま

熱あたりのおもな症状は次のとおり。身体的なダメージとしては、全身症状と3つの場所(頭(脳)/お腹/筋肉)の症状に分類されます。

熱あたりの症状

「身体的なダメージだけでなく、集中力が低下したり、鬱っぽくなったりと精神的なダメージが出る人も多いもの。“病院に行かなかったから大丈夫”というわけではなく、直接的にも間接的にも影響を受けているのです」(谷口先生)

熱あたりは、熱中症の初期サインだった!

熱あたりという大きなピラミッドの中に熱中症も含まれるイメージ
「熱あたり」という大きな氷山の中に熱中症も含まれるイメージ。いわば熱中症は氷山の一角

熱あたりと熱中症、夏バテはどのように異なるのでしょうか。

「たとえば、短時間で症状が改善するものが初期の『熱あたり』で、回復に時間がかかる場合は、熱あたりが進行した『熱中症』の可能性があります。倦怠感や不調が数日間続くようなら、熱あたりが原因かもしれません。熱あたりがさらに長期間続くのがいわゆる『夏バテ』です」(谷口先生)

谷口先生によると、熱あたりの対策は「暑さに負けない体づくり」と「環境の工夫」がカギ。対策について、谷口先生とダイキンの広報担当・重政さんに詳しく聞いてみました。

予防策①:暑さに負けない体づくりの習慣化

暑さに負けない体づくり

「地球沸騰化ともいわれ、春が短くなり、夏が長くなった近年では、冬から急激に暑さに移行することで体が対応しづらくなります。その結果、熱あたりが起こりやすくなっています。日ごろから汗をかく運動や入浴を心がけ、暑さに体を慣らし、本格的な夏の到来の前に暑さに強い体をつくることが重要です」(谷口先生)

予防策②:夏でも快眠!エアコンを上手に使う

夏場の夜間のエアコンの使い方のコツ

暑さに負けない体づくりと併せて、高温多湿を避けるために、エアコンを適切に活用することも重要です。ダイキン広報担当の重政さんによると、以下の使い方がポイントだそう。

「エアコンをタイマーでオフにすると、室内の温湿度が上がりはじめ、熱が体にこもりやすい環境になっていきます。切タイマーは設定せず、室温が28℃程度になるような設定温度でつけっぱなしにするのがおすすめ。快適な湿度は40~60%と言われています。湿度が高い梅雨どきなど、エアコンだけでは湿度が下がりづらい場合には、除湿機との併用も有効です」(重政さん)

熱をうまく調節して「夏に負けない暮らし」をしよう

みんなで熱あたりしない夏プロジェクト

夏の不調は、年齢のせいにもしてしまいがち。「自分の体力がないせい」と片付けられることも多いですが、その背景には「熱あたり」という原因があるケースが多々あります。

現在、空調専業メーカーであるダイキンと熱問題に詳しいさまざまな専門家が取り組んでいる「みんなで熱あたりしない夏」プロジェクトは、こうした認識を広め、健康的な夏を支える情報発信を目的としています。

「エアコンは夏を健康的に過ごす上で欠かせないものになっています。ご自身はもちろん、仕事や勉強に励むご家族の健康を守るためにも、無理に我慢せず、ぜひエアコンを上手に使っていただきたいと思っています」(重政さん)

「熱あたりの予防薬はないものの、エアコンにはそれと同じだけの価値があると考えています。夏に向けて汗をかけるようになる習慣とエアコンの活用で、熱をうまく調整しながら夏に負けない体を目指しましょう」(谷口先生)

今年の夏もかなりの高温が予想されています。汗をかける体づくりやエアコンを活用しながら、健康的な毎日を送りたいですね。

 「熱あたり」についてもっと詳しく

問い合わせ:ダイキン工業 https://www.daikin.co.jp/

監修/谷口英喜先生 イラスト/tomekko 取材・文/山本杏奈