●3泊4日のホテル療養後退院。息切れ、味覚・嗅覚異常、食欲不振など後遺症はしばらく続いた
3日連続投薬なしで平熱が続き、発症日(11月4日)から10日経っていることで療養は終了。夜、新幹線で東京の自宅へ。その後2週間ほど自宅療養を続け、11月末から徐々に仕事を再開。
「平熱でも息切れが激しく深呼吸ができない状態がしばらく続きました。また味覚・嗅覚異常が続いたため、11月末まで食欲も湧きませんでした。嗅覚は最近戻ってはきましたが、元々の嗅覚がどのくらいだったのか、自分でもわかりません。味覚はだいぶ直ってきたと思います」
すべての画像を見る(全5枚)●コロナは風邪とは違う。命のはかなさを考えさせられる病
芸能界では昨春に志村けんさんが新型コロナ感染で逝去されました。「志村けんさんの訃報を聞いたときに、本当に命のはかなさを感じて悲しくなりました。私の友人も、私と同時期に新型コロナに感染して発熱、翌日に入院。その後、意識不明から危篤になり、エクモ(人工心肺装置)につながれ2か月近く入院していました。
その間に血栓や脳梗塞にもなったそうです。また別の友人は回復後も体調がすぐれない日々が続き、それが後遺症なのかもわからない。
新型コロナの怖いところは、急激に悪化して死を覚悟しなければならいこと、また後遺症に悩まされたり、隠れていた病気が出てくる可能性があることだと思います。風邪気味からはじまっても、まったく違う。私はたまたま軽症だっただけです」
●感染経験があるからこそ、「外出の自粛」と「マスク」が大事だと痛感
新型コロナに感染する前と後で、意識や行動に変化はありましたか?「もともと高齢の母と仕事で接することも多かったので感染予防に気をつかっていましたが、さらに注意深くなりました。感染者数が増えている今は、できるだけ外出を控えています。
飛沫感染を防ぐことがなにより大切なので、マスクの徹底。フェイスシールドよりもマスクですね。外出時はアルコールスプレーを持ち歩いています」
自宅は玄関の外にも消毒用アルコールも設置。掃除感覚でドアノブなどは除菌し、加湿器には次亜塩素酸水を使い、終日加湿器をつけつつ、こまめに換気をしているという川上さん。「感染後、外食も注意するようになりました。同席する人とは斜めに座る、料理や箸は共有しない、食べ終わったらすぐマスク。
飲食店の感染対策はきちんとしていると思うのですが、仲のよい人と食事に行くほど話が盛り上がってマスクをするタイミングが遅れたりと甘くなりがちなので、緊急事態宣言後は自粛しています。持ち帰りなどの利用で貢献できればと思っています」
●「コロナとともに暮らす」ことをもっと自覚したい。今私たちにできることとは
最後に川上さんは、社会全体で新型コロナを受け入れていってほしいとおっしゃいます。「陽性者になった瞬間に、ウイルスの塊だと自責の念にかられましたが、感染対策をしていてもうつってしまうものです。それに“感染して申し訳ない”と思い始めると、疫学調査で自分が正直に話すと一緒にいた人にも迷惑をかけるのでは、と調査に協力することもためらってしまいそうになるかもしれません。
“だれかに感染させたかも”という恐怖や後悔はありましたが、それ以上に当事者は長い間、後遺症や新たな病に悩まされることになります。すべての人が“自分もコロナに感染しているかもしれない”という立場で考えれば、感染予防の行動につながるし、優しい声かけも生まれます。感染していなくても、まずは自分事として考えるきっかけになればうれしいです」
<写真提供/川上麻衣子さん 取材・文/磯 由利子>
【川上麻衣子さん】
1966年生まれ。女優。14歳でデビューし、「3年B組金八先生」(TBS)の生徒役で注目を浴びる。以後、数々のテレビ・映画・舞台に出演。愛猫家としても有名で、仲間とともに「猫と人が暮らしやすくする提案を東京(to-kyo)から発信する」という思いを込めて、2018年「
ねこと今日 Neko-to-kyo」を立ち上げ、理事長を務める。YouTubeチャンネル「川上麻衣子ねこと今日neko-to-kyo」にて、猫の情報や新型コロナ体験の動画も配信。近隣の人や猫好き仲間の情報交換の拠点になればと、2019年千駄木に「Maj no ma(まいの間)」をオープン。著書に『彼の彼女と私の538日 猫からはじまる幸せのカタチ』(竹書房刊)