●1か月ぶりに会った子犬
1か月ぶりに会った子犬は少し大きくなったように見えた。人間にしろ0歳児の生き物の1か月の成長は著しい。
すべての画像を見る(全15枚)「あれまぁ~」感嘆をあげながら子犬を腕の中にだっこさせてもらった母は、その様子を動画で見た妹から「お母さんめっちゃご機嫌やな」と言われるほどに表情が緩んでいた。母は子犬を見つめながら「かわいらしいお鼻やなぁ」と誰に言うでもなく呟いた。
子犬の鼻先は黒かった。
明るい茶色の毛並みもくるりと巻かれたしっぽもつぶらな瞳に大きな三角耳も、チャームポイントがたくさん見つかっていくなかでも、黒い鼻先にいっとう愛おしさが募った。
●これからここが子犬のホーム
子犬は投げたものを取ってまた投げてというやりとりを身につけていて、エネルギッシュに遊んでいた。子犬が部屋をにぎやかに駆け回るとともに、子犬の名前を皆々が呼んでいた。
子犬と書いているこの子にももちろん名前があって、それは優しい響きのよい名前が命名された。親戚から名前を書かないでと言われたわけでもないがやはり犬同様、伏せておくことにする。
子どもの頃からこの親戚家族と仲良くさせてもらっているけれど、こちらを慮ってくれる優しさと毛布のようなあたたかい家族という印象を変わらずに持ち続けている。これからここが子犬のホームとなり、歳を重ねていく。
健やかな犬が育っていく予感、それはコロナ禍で久々に心からホッとできた幸福でしかないニュースだった。
帰りがけにお家の前で子犬が新しく加わった家族写真を撮って、またバイクのニケツで同じ道を戻った。短い帰り道、母が「やっぱり犬がいる暮らしはいい」と噛み締めるように言っていた。
●犬がいつもより大きく見えた
「ただいま、犬」いつものように帰宅を迎えてくれたが連れて帰ってきた子犬の匂いに気づけば匂いのもとを探るように嗅ぎはじめた。先ほどまで子犬と触れ合っていたから、めちゃくちゃ大きな犬に見えてなんだか笑えた。
ズボンの裾に鼻を寄せてくる犬の頭をなでながら「犬に弟分ができたよ」なんて母が話しかけていた。またおやつを持って会いに行こう。
この連載が本
『inubot回覧板』(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。
【写真・文/北田瑞絵】
1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント
@inu_10kgを運営