●実際に家族信託をしてみて感じたデメリットも

家族信託は契約内容の自由度が高い分、契約条項が煩雑です。素人考えで、なんでも自由なことを書けばいいというものではなく、法的にそれが可能なのかを検討しなければならず、専門的な判断が必要だったので、弁護士へ作成を頼んだのはよかったと思っています。しかし、その分初期費用はかさみました。

引き戸に集まる人たち
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もう一つ困ったことは、親族のなかに、家族信託をいくら説明をしても内容を理解できず反対してきた人がいたことです。

「お父さんはまだ若いのに」とか「そんなめんどくさいことをやらなくても、通帳と印鑑だけこっちが管理しておけばいいだろう」などと色々と言われました。

「家族信託では、受託者になる人の権限と責任が大きい一方、もう一つの大きな特色として家族信託した財産について死後にだれに託すのかという遺言機能をつけることもできます。そうすると、本人の家族・親族間で、受託者をだれにするのか、また遺言機能の中身を巡り、揉めてしまうこともありますので、調整・注意が必要です」(福原弁護士)

【Check!:認知症になってしまってからでは家族信託の契約は結べない】

結果から言うと、家族信託を結んで一年もしないうちに、父は糖尿病からくる合併症で脳梗塞を発症し、軽度の認知症になってしまったのです。お金の話にうるさく口出ししてきた人たちは、いざというときになにもしてくれませんでした。

認知症になってしまってからでは、もう家族信託を結ぶことは叶わなかったので、最初の入院のタイミングで親子できちんと話し合い、本人の意向を反映させた形で財産を守れたことは本当によかったと思っています。

「家族信託は、一番大切な本人の意思、これを尊重した上での財産管理・承継を行える有用な手段です。家族信託、遺言、(任意)後見、(死後事務)委任など、ご家族や財産によって採るべき手段は異なりますが、それぞれの特色や使い方を正しく理解して生前に対策をすることで、本人の意思を尊重して将来的な紛争を未然に防ぐことができます」(福原弁護士)

相続でお金がもらえる場面ではいろんな人が集まってきますが、いざ介護が必要になったときに力になってくれる人は限られてきます。親も現役世代の子どもたちも、将来安心して暮らせるように、元気なうちから準備をしておくことが大事ですね。