親の財産を子どもたちが管理するシンプルな家族信託のやり方

今回は、父の預貯金のみ(不動産などは含まない)を子どもである私と弟で管理していく、というシンプルな内容で家族信託をしました。

●契約書を専門家に依頼するメリットは?公正証書にしておくのもおすすめ

「家族信託の契約自体は、お互いの合意があれば有効に成立します。しかし、親族間で相続争いが起きる可能性がある場合や不動産のような性質上第三者の関与が予想される財産の場合など、将来的に何が起こるか予想ができない状況では、公証人に内容をチェックしてもらい公正証書にしておくこと或いは家族信託に精通した専門家に監修してもらうことがおすすめです」(福原弁護士)

私たちも、契約書の作成は専門家に依頼して、公正証書にして作成することに。ただ家族信託は、まだあまり普及していない方法で、弁護士や行政書士でも詳しい人が少なく、都内でもいい先生を探すのがけっこう大変。複数の専門家の方のお話を聞き比べ、中でも父と家族のことをしっかりと考えて対応策をご提案いただいた福原弁護士にお願いすることにしました。

【Check!:家族信託の契約書を弁護士に頼むときの費用は?】

家族信託の契約書を弁護士に依頼する場合の費用は、信託財産の金額によって異なります。
いくつか見積もりをしましたが、3000万前後の評価額の場合で、30万円~100万円くらいの幅がある相場観でした。

●柔軟な内容で満足のいく契約書をつくってもらえた

手帳を開いたまま頭を抱える女性
すべての画像を見る(全4枚)

父が委託者、子どもの私が第一受託者、弟が第二受託者になるというシンプルな契約書です。父の生活に必要なお金は年金から拠出しつつ、不足分を信託口座から切り崩していけるような仕組みにしました。

また父が溺愛している愛猫にかかる費用(エサ代やトリミング、病院などの費用)も、その都度、家族が立て替えて支払った分を、信託口座から補っていける内容になっています。

第一受託者である私になにかあったときには、弟が父の財産管理を引き継げるので安心です。

後見制度には抵抗を示していた父ですが、自分が信じて任せられる家族にお金を管理してもらえるこの制度には、すんなり納得してくれました。自分で契約内容を確認したり、コントロールができる点も、本人が同意しやすかったポイントでした。

【Check!:父の財産を別フォルダへ隔離するイメージだけど、詐欺リスクは残る】

家族信託の契約を結んだことで、父の財産の所有権は受託者である私へ移りました。
しかし受託者個人の固有の財産からは完全に隔離されるそう。受託者の私が万が一破産をしたり、強制執行を受けた場合にも、家族信託をした父の財産は影響を受けません。

今後、父の生活能力がなくなってしまった場合も、子どもである私が父の財産を管理しながら介護していけるのはとても大きなメリットだと思いました。

「ただし、家族信託は、あくまで家族信託をした財産の管理・処分をするものです。その他の財産について、たとえば怪しい契約を本人の意思で結んでしまった場合、その契約を無効にできるわけではないので注意が必要です。

全体的な本人の行為の代理や同意、追認や取消によって本人の保護を図るならば、成年後見制度との併用も考えなくてはなりません」(福原弁護士)

電話をする様子

もっとも、私の父の場合「お金はすべて弁護士に家族信託をしてもらった」というと、怪しい人たちは自然と離れていきました。

●信託用の銀行口座を開設するのは結構大変

家族信託用の銀行口座の開設には、ちょっとした苦労がありました。大手の銀行は、自分たちの信託商品があるので、そちらを使うように説得されてしまうからです。
別の金融機関でも、家族信託用の口座の作成には抵抗されることの連続でした。

「家族信託の口座開設は、本来はどの金融機関でもスムーズに対応されるべきなのですが、実際、【委託者○○(父の名前)受託者◇◇(私の名前)信託口】名義での口座をメガバンクでつくれる例はほとんどないですね」(福原弁護士)

【Check!:完全に分別管理して運用すれば名義は個人でもOK】

セキュリティ面を考えると、口座はどうしても大手の銀行でという人も多いはず。

「信託口名義での口座開設が難しいときは、【◇◇(受託者の名前)】名義の新しい口座をつくり、信託財産の管理しか行わないことにして、信託財産と固有財産とを明確に分別管理します」(福原弁護士)

こうして私も、利用目的は家族信託とし、個人名義での口座をつくることに。
弁護士がつくった家族信託の契約書を持って銀行窓口へ行き、事情を説明しても対応が悪くなかなか手続きできず。でも最終的には銀行の上席が弁護士の書面を確認してくれて、無事に信託用口座の開設ができました。