だんだんと気温がさがり、温かい中華まんを食べたくなることも増えたのではないでしょうか。中華まんといえば、「井村屋」を思い出すという方も多いと思いますが、2020年にまさかの“具なし中華”まんを発売するなど、じつは井村屋の中華まんを取り巻く環境に少し変化が起きていることを皆さんはご存知でしたか?

「あずきの井村屋」。おいしさの秘密と商品とは?

インタビューに答える女性
井村屋株式会社 開発部点心・デリ/DCチーム 金井彩さん
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井村屋にはおいしい製品がたくさんありますが、販売している商品の6割がなんと小豆を使った商品! 今回は、井村屋株式会社 開発部点心・デリ/DCチーム 金井彩さんに、小豆の秘密、そしてちょっと驚きの商品について話をお伺いしました。

 

 

●1896年創業の歴史ある井村屋。スタートは「ようかん」から

まずその歴史から簡単にご紹介すると、その歴史は古く創業は1896年。井村和蔵氏によって菓子舗「井村屋」が三重県で開業したことが始まりです。創業当初の商品は「ようかん」のみでしたが、その後「うずまき」や「とらまき」といった、“あん”を使った商品が大ヒット。今の「あずきの井村屋」の伝統は、ここからずっと受け継がれています。

ようかん
創業時の「山田膳流しようかん」
 
 

あんこがおいしい秘密は、北海道産小豆をはじめとした、厳選された質の高い小豆を使用し、品質を一定に保つために厳しい選別を行ったうえで自社の専用施設で生豆から炊き上げているからです。さらに、小豆の煮汁に含まれるビタミンやミネラルなどの栄養をとじこめる「煮あずき製法」を開発するなど、おいしいあんこのためにとことんこだわっています。

●なんと“あんパン”を発売していた!

この時期になるとおなじみの“あんまん”も、おいしい小豆を使った主力の商品。そのため、“〇〇まん”のイメージが強くありますが、2021年に「井村屋謹製 餡ぱん」を発売していることを知っていましたか?

あんぱん
2021年発売した「井村屋謹製 餡ぱん」

金井さんによると、この「餡ぱん」はベイクド・デリという冷凍パンのラインナップのひとつで、「野菜と果物のまろやかポークカレーパン」「とろ~りつぶつぶコーンポタージュパン」などに続くシリーズなんだそう。(※カレーパン、コーンポタージュパンに関しては現在休売中)

「ベイクド・デリは2010年度より開発に着手し、2016年度にシリーズ初の商品を発売した商品です。今まで中華まんで培ってきた、生地・具材・冷凍の3つの技術を活用して、新たになにかできないか? と考えたことがきっかけになったのですが、開発から発売まで約6年の年月を費やしました

女性

「『餡ぱん』に限らず、ベイクド・デリシリーズは、中華まんシリーズでも使用している2回発酵させる『二段発酵製法』の生地を使っています。そのため、もっちりとした食感や風味、うま味を感じられるのですが、通常の蒸しに加えて、新たに“焼き”の工程をを取り入れたことで、新食感の冷凍パンが誕生しました。そのパンに、伝統のあんこをつめこんだ商品が『井村屋謹製 餡ぱん』です」

あんぱん

「パン生地は北海道産の小麦粉、生クリーム、発酵バター、塩を使用したことで、味も香りも豊かに仕上げました。ほのかに甘みを感じられて、うま味もしっかりと感じられますよ。さらに、焼きたてを急速冷凍することでおいしさを閉じ込めています。ご家庭で食べるときには食べる前にトースターで“焼く”ことで、香ばしさが加わり、外はカリっとしているのに中はもっちりが楽しめます

あんぱんの中身
ぎっしりあんこがつまっています

「あんこには粒が大きくて煮崩れしにくい“北海道産大納言小豆”を使用しているので、しっかりとした粒感があります。また、井村屋では小豆を商品や商品の温度帯ごとに炊き分けているのですが、この『餡ぱん』では冷凍食品の特徴を生かすために、純度の高い白双糖で低糖度に炊き上げました。そのため、上品ですっきりとした甘さのあんこを味わうことができますよ」

この商品は「あずきの井村屋」として初めて発売した餡ぱん。パンが出たことだけでも驚きですが、その食感と味は今までに食べたことのない新しいもの。今は中華まんのイメージが強いですが、そのうち井村屋はパンもおいしい! というのが定着する日もそう遠くはないかもしれません。

●ついにここまできたか…皮だけのまんが誕生

中華まん
ぱっと見は普通の中華まんと変わらない…

一方、第一線を駆け抜け続けている中華まんにも大きな進化が。これまで、「あずきの井村屋」と紹介をしてきましたが、なんと具材のない中華まん…その名も「すまん」という商品が発売されていました。

自社商品の6割が小豆製品で、あんこにはかなりこだわっています! といっていたのに一体なぜなのか。この思いを金井さんにぶつけてみました。

笑う女性

「そうですよね…。はじめ見た方はびっくりされるかもしれませんが、もともと『中華まんの皮だけほしい』といった声は多かったんです。Twitterやお客様相談ルームにも商品化してほしいとご要望が多く届いた結果、具のない中華まん=“すまん”を、2020年に発売しました。ただ、当時は数量限定発売だったため早々に完売し、食べられなかったお客様から再販の声がこれまた多く寄せられました。そして、2021年に『すまん』を再販することになりました」

中身のない中華まん
本当に中身が入っていません!

ちなみに「すまん」という名前は、具が入っていない皮だけの中華まんで「素の中華まん」、「具が入っていないからすまん!」という意味で名づけられたもの。特定のだれか名づけ親がいる、という訳ではなく社内で愛称として「すまん」と呼んでいたものが商品名となったそうです。

「先ほどの『餡ぱん』もお話しましたが、二段発酵させている生地なので皮だけでも十分においしいんです。また、具材が入っていないことで自分だけのオリジナル○○まんをつくることもできるんですよ。たとえば、ハムやチーズを挟んだ洋風まんや角煮などを入れて食べるのもおすすめです。そのまま食べるのももちろんおいしいですし、アレンジはいくらでもできるので、どうやって食べるか考えるのもいいですよね」

●定番中華まんもアレンジでひと味違った商品に

井村屋では『すまん』のほかにも、HP上でたくさんのアレンジレシピを公開。SNSなどでも「アレンジレシピ」がたびたび話題になっていますが、そのなかでも金井さんのおすすめは“焼き肉まん“なんだそう。

焼いた肉まん
皮のこんがり感がいつもの肉まんとまた違っておいしい!
「肉まんを一度レンジで温めていただいてから、フライパンにごま油を入れて肉まんを焼くだけ。調理のポイントはフライ返しで押しつぶすことです。1回焼くことによって、カリっとした食感と香ばしさがプラスされますよ。ほかにも、肉まんやピザまんの上にチーズやケチャップを“追い”でのせると、ひと味違った味わいを楽しむこともできます」

そのまま食べても少しアレンジを加えてもおいしい井村屋のまんとパン。伝統を受け継ぎながらも新しいことにチャレンジする、開発者のこだわりがぎゅっとつまった商品です。中華まんはもちろんのこと、これからの商品動向に注目です。

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