●ブリを使った、実際につくった秋の献立2例
――書籍では、寿木さんが極めた「きほんの10品」が紹介されています。その料理を使った、最近の献立の例はありますか?「秋のある日の献立を2例ご紹介します。大好物のブリを使って、テイストの異なるふたつの献立をつくりました。いずれも『きほんの10品』を応用させた仲間レシピから構成されています」
(1) 焼きブリのさっと煮を主役に
すべての画像を見る(全7枚)「『きほんの10品』のうち、『焼き魚のさっと煮』がメインの献立です。ブリをフライパンで焼いてから、コマツナで覆い尽くし、水か湯を注いでフタをします。味つけはしょうゆとみりんのみ。魚と野菜が一度に取れる、簡単で汎用性のあるレシピです。旬のムカゴを炊き込みご飯にして、キノコをたっぷり使った温かい酢の物をそえました。
温かい酢の物って、ちょっと意外ですよね? 煮干しと水、キノコ、油揚げを鍋に入れてから火にかけ、酢と砂糖、鶏ガラスープの素少々で味をととのえます。いちど火をとおしてあるので、ツンとくる酸味がやわらぎ、汁物代わりに重宝します。私は火を止めてから最後に“追い酢”をして、フレッシュな酸味をたしています。もちろん煮干しもそのまま食べます」
(2) ブリの刺身を使った簡単お寿司丼
「こちらは『刺身混ぜずし』の応用。ブリの身に赤シソゆかりと白ゴマを振りかけ、酢飯の上に乗せるだけ。すし酢はある程度まとめてつくり置きしていますし、市販のものも持っています。野菜を切るだけの『切るだけサラダ』には、旬の白菜、しかも軸の硬い部分だけを使っています。ここ、おいしいんですよね。
汁物は、白菜の葉の部分と、レンジで蒸して潰したサトイモを豆乳仕立てにしました。30分で完成したとは思えないくらい、満足度の高い夕飯になりました」
「皆さんこまかく丁寧に読み込んでくださっていて、しかもそれをレビューやSNSで書いて拡散してくださったことにまず驚きました。こんなに感想文の長い料理本はなかなかないと思っています。改めて本のもつ力を感じました。
とくに多く見られたのが『レシピ本のカテゴリーに収まらない不思議な本』というコメントです。本を読んでレシピを知るだけではなく、読み終わったあとに自分の暮らしを再点検し、再構築していくというアクションを生む本だというのが、多くのコメントに共通した意見でした。友達からは『時短という言葉を出さないでくれて、ありがとう』とも言われました。
働く親だからって、誰もが時短をしたいわけじゃない。手抜きをしたいわけでも、『映え』を目指したいわけでもない。忙しい毎日でも、できる範囲でクリエイティブに健康的に料理をしたい。この本はそういう気持ちに寄り添ってくれている、と彼女は話してくれました」