「口臭の原因になる」「見た目が悪い」など悪いイメージをもたれている、舌についている白い苔(舌苔)。
こまめにみがきたくなりますが、歯科医師の森田敏之さんは「舌はとても繊細な器官。毎日しなくてもいいんです」と語ります。舌苔の正しいケアについて伺いました。
舌の掃除は毎日しなくてよし!多くても1日1回にとどめて
●舌苔はどういうもの?増加する条件とは
まず舌苔とは、舌の表面や口腔内の細胞がはがれ落ちたもの、舌表面にある小さな突起(舌乳頭といいます)の間に付着した細菌や、食べかす、そして白血球などが集まったものなどをいいます。皮膚の垢と同じようなものですね。
新陳代謝により常にできていますが、食事や唾液によって洗い流されるので、正常な状態ではうっすら白いくらいの状態です。
唾液の分泌が減るとつきやすくなります。また、歯みがきを十分に行わないと舌苔の量は増加します。
さらに、胃腸の調子が悪いとき、発熱や感染症、抗生物質の長期服用でも舌苔は厚くなります。疲労などで新陳代謝が上手くいかないときやストレスが原因になるとも言われていますね。
喫煙も舌苔を厚くする原因です。
口臭の6割は舌苔が原因だという報告もあります。また、高齢者などは嚥下機能(食べ物を飲み込むこと)が衰えてくると、舌苔の細菌が原因で誤嚥性肺炎にもなることも。
歯みがきをしっかりしていても、舌苔が厚く残った状態のままでいると歯周病のリスクが上がります。
●こすりすぎるのはNG!味覚障害を引き起こすことも
厚い状態で放っておくのがよくない舌苔。しかし、白い部分がなくなるまできっちり落とした方がいい、というのは間違いです。
顔の皮膚のお手入れと一緒でこすりすぎるのはよくありません。舌の表面を傷つけないように注意が必要です。舌乳頭(舌の表面にある小さな突起)まで削ってしまうと味覚障害を引き起こすことになりかねません。
歯ブラシでこする方がいますが、歯ブラシでは硬すぎるのでやめましょう。
●舌苔の正しい落とし方
歯垢が歯ブラシでこすらないと除去できないのと一緒で、舌苔はマウスウォッシュでクチュクチュするだけで除去はできません。
舌ブラシや舌用のヘラなどの専用の除去器具がありますのでそれらを使用しましょう。
専用の器具で舌の奥の方から手前(先端側)に向かって軽くかき出します。力を入れてはいけません。
また、往復で動かすこともよくありません。舌の上では一方通行です。かき出す回数も1~3回程度で何回もかき出す必要はありません。
最近では舌苔のケアに役立つタブレット状のキャンディーも発売されています。補助的に使用するのも効果的でしょう。
頻度ですが、必ずしも毎日行う必要はありません。基本的には舌が白くて気になるようになってきたときに除去します。
舌苔がつきやすい人でも1日1回が限度です。
舌苔がとくに気になる方は口の中が乾燥していないか、唾液が少なくなっていないか確認をするようにして、ドライマウスの対策をしましょう。
また、東洋医学的な考え方では、舌苔が白く厚くなりがちな人は、冷え性や水分代謝の機能が十分に働いていないと考えられています。冷たい飲み物は控え、体を温めるようにしたり、適度な運動をするなど心がけてください。