家庭内の家事分担についての意識が高まっていますが、実際には女性が多く担っているのが現状。さらに育児となると「男性不在」になりがちでした。

そんななか、妊娠・出産・育児をリアルな男性目線で描いた本『こうしておれは父になる(のか)』。著者である本人さん(

@biftech

)にお話を伺いました。

本人さん
世の男性が育児にコミットしない理由とは?
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産後の妻には優しい言葉をかけるより、5分でも長く寝てもらった方がいい

――著書では、妊娠から生後12か月の模様をライブ感あふれる文体でつづっています。状況が目まぐるしく変わるなかで、男性目線でとくに大変だったことはなんでしょうか?

大変なことをあげていったらキリがないんですけど、体力的なことよりも、「やれること」の限界というか、性別的にどうしても「できないこと」に対する歯がゆさがありました。

鈴木おさむさんのエッセイのタイトル(『ママにはなれないパパ』)じゃないですけど、妊娠出産で彼女がつらそうにしているときも、どうやったって自分は代わることはできない。そういうやりきれなさだったり、生き物としての違いから考えが及ばなかったりして、そこでケンカが起きたこともあって。

――具体的には?

2種類あって、ひとつは「頭ではわかっているけど、どうにもならないこと」が原因のもの。もうひとつは知識不足が原因のものですね。

たとえば出産時に相手の腰をテニスボールでマッサージするとラクになるそうなんですが、その「ラクになるポイント」が自分にはわからないから、ひたすら怒られ続ける…みたいな。

また、家事育児の問題が起きたときに、ついつい「俺もやってるよ!」と言って余計に怒らせてしまうこともありました。

――いわゆる「産後クライシス」というか。知識では知っていても、いざそういう状況になったときに、冷静に行動するのは難しいと。

そうですね。子どものいる男友達から「産後は本当に大変だから気をつけろ」というアドバイスをもらっていたものの、「でも俺、妻のこと愛しているし、仲いいから大丈夫」みたいな気持ちでいたんです。でも、自分たちも全然例外ではなく…(苦笑)。

――むしろ愛情が、甘えにつながっていた可能性も?

間違いなくそれはありましたね。優しい言葉をかけるとかよりは、5分でも長く寝てもらった方がいい。

話し合って解決するに越したことはないけど、それすら無理という時期もあって、「ここはひたすら奥歯を噛んで我慢するしかない」ということもありました。「怒りは6秒待つと収まる」と聞くので、それを実践したり。

育休は絶対に取るべき。職場復帰してからも効率がよくなった

――出産後は、育休を取得されたそうですね。

育休は絶対にとるべきです。まず、ふたりいることでお互い疲れないし、作業も分担できるものは手分けできるから、すごく効率がよくなります。それに育児の現場のOJTというか、家庭でなにが起きているのかを知っておかないと、今後の子育てにも影響がでてくると思うんです。

自分は会社の理解もあって、生後2週間から1か月くらい育休をとったんですけど、この時期のことを肌で感じていたからこそ、職場復帰してからも「今こういう状態なら、自分はこうすべきだな」と予測してスムーズに行動することができる。家庭の負担軽減にもなるし、今後の自分の糧にもなりました。

――普段のタイムスケジュールと、奥様とのタスク配分も教えてください。

お互いにフルタイムで働いています。保育園が9時からなので、8時くらいに起きるのが理想なんですが、なぜかウチの一歳児は、5時に起きるんですよね(笑)。そこから二度寝して、8時くらいにご飯を食べさせて、着替えて、熱を測ったり、オムツを変えたりして、保育園に向かいます。

送り迎えはできる方がやっているのですが、妻が力技で仕事を片づけて迎えに行くことが多いです。僕はフルタイムとはいえ、フレックス制でリモートワークも可能な職場なので、保育園で子どもになにかあった時には動きやすい。そんなふうに、お互い融通のきく時間のなかでこなしていく形です。

18時~18時半くらいまでにお迎えが終わって、そこから19時からご飯、お風呂、寝かしつけという流れになり、だいたい一通り終わるのが21時過ぎくらい。そこから「大人の時間」というか、テレビを観たり、自分たちの食事の時間になります。0時くらいには就寝していますね。

――家事や育児タスクを解消するうえで、買ってよかった家電やアイテムはありますか?

育児と直接関係ないですが、バルミューダのオーブンです! パンが本当においしいんですよ。そして調理が終わったときの音が「チン」ではなく、アコースティックギターのおしゃれな音色なんです。

もちろん、食洗機だったりルンバだったりの、自分たちの労働時間を縮めてくれるものも、いさかいのもとを断ってくれるのでありがたいんですが、生活を豊かにしてくれるものも大切ですよね。

ベビーカーの種類もライフスタイルによって変わってくるんだという発見がありました。

三輪や四輪、タイヤがふたつつながっているものなど、いろいろあるので、自分のライフスタイルに合わせて選んだ方がいいんです。バス移動が多い人は大きいバギーだと不便で、軽いベビーカーの方がラクだったり。

もう家父長制のままでいられる状況ではない

――本人さんは家事育児に主体的ですが、SNSなどでは、「旦那が帰ってこない」「育児に協力してくれない」といった愚痴投稿が共感されて、拡散されているのをよく目にします。素朴な質問なのですが、そういう家庭の旦那さんって、どうして帰ってこないんでしょう?

自分もそれは不思議に思っている側の人間なんですが、働く業界によっては、いまだに働き方改革も進んでいなくて、家に帰れない人もいるんだとは思います。でも、家にほっとくとすぐ死んでしまいそうな生き物がいるのに、気にならないのかなとは思います。

夫は夫で、「自分がいたら邪魔かな」と感じているというパターンもあるかもしれません。たしかに無力感はいろいろな場面で感じるので、働いて家にお金を入れるのが自分の役割だと割りきってしまう人が出てくるのも仕方ないのかもしれない。ただ、もう家父長制のままでいられるような状況ではないですよね。

――そういうロールモデルにガタが来てるからこそ、いろんな問題が噴出しているのかもしれません。

自分の場合、子どもができる前までは、昼はサラリーマン、夜はライターで、それで完結していました。今はそこに子どもや家のことを考える時間が増えて、レイヤーが複雑になったとは感じます。

でも、本当にぶっちぎりで楽しいんです。「俺は絶対に子どもの写真を待ち受けにしない」みたいに斜に構えていたこともあったんですけど、携帯電話のカメラロールはすごいことになっています(笑)。第二子も生まれるので、フォルダのつくり方から考え直さないといけないですね。

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【本人さん】

都内在住の30代男性。平日にサラリーマンをしつつ、さまざまなライブやフェスに足を運んで記録するインターネットユーザーとしても活動している。Twitter:@biftech。著書にこうしておれは父になる(のか)(イースト・プレス刊)がある