捨てないぜいたく
すべての画像を見る(全6枚)「千枝子、ここはオアシスじゃないか!」アメリカ人の神父さまが、初めてわが家においでになったとき、目を丸くしておっしゃいました。そうか、そんな風に感じる方もいるのだなと、嬉しくなりました。
八幡平へ引っ越すとき、がらんどうの空間に、4トンロングのトラックに400箱の荷物を運び込みました。そこに16年分のものが加わって、至る所に本は山積み、これは大切なものだからと言いつつ、写真や飾りもの、絵や小箱などが、棚や窓辺や床をところ狭しと埋め尽くしています。それでも、あれは大体あのあたりに…とは覚えているので、取り出そうと思えば取り出せます。
●記憶の泉に漂っている方が心地よい
もともと、ものを捨てられない性格なのです。整理は苦手。このままでいいやって。あれやこれやの記憶の泉に漂っている方が、心地よい。妹に、「お姉さん、好きな本を持って行っていいわよ、という会をしなさいよ」と言われますが、それは、私があちらへ行ったあとでご自由に。春彦を頼りにして、あまり心配しないことにしています。
そういえば、かの神父さまの修道院に行ったとき、ガラスばりの仕切りの向こうに、院長室が見えました。足の踏み場もないほど床に紙が散らかっていたのは、院長が詩人でもあったせい? 吹き出しそうでしたけど、そうか、こういう人もいるんだ、と思ったものです。
ときどき、学生時代の友人からすてきな絵ハガキが来ます。そこには、必ず、「これは捨て活の一環ですからご返事の心配はしないでください」と書いてあります。なんてしゃれてるんだろう、さすが文豪の孫だと思っています。
発売中の『今だからわかること 84歳になって』(KADOKAWA刊)では、末盛さんが暮らす岩手の景色のほか、大切にする日課と習慣、仕事への向き合い方など、これまでの経験から学んだヒントがたくさん紹介されています。



