毎月やって来る「生理」。どうしても煩わしく感じてしまいますよね。
しかしご存じのように生理は、女性の体に欠かせないものなのです。
今回は、生理の仕組みからよくあるお悩みの解決方法まで、生理との上手なつき合い方を、杉山産婦人科理事長で、不妊治療の専門家である杉山力一先生に伺いました。
1.いまさらだけど…生理ってなに?どうして大事なの?
健康な成熟期の女性に、一定の周期で訪れる生理。
皆さんはこの生理がどうして起こるのか、答えられますか? 身近な現象ですが、いざとなると説明できない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは、生理が起きるまでの過程をしっかりと理解しておきましょう。
女性は思春期を迎えると、女性ホルモンの分泌量が増え、初潮を迎えます。そして初潮後、約1年を経て、妊娠し子どもを育てられるような状態に身体が育った後、排卵が起こるようになると考えられています。
排卵の周期は、生理開始から約2週間後です。排卵された卵子が卵管に取り込まれて精子が来るのを待つ期間を「排卵期」と言い、その期間に向かって子宮では、受精卵が着床しやすいように内膜が厚みを増していきます。
この内膜は、受精卵が着床すれば、更に厚みが増して「胎盤」となりますが、着床がない場合には内膜ははがれ落ち、出血と共に膣を通って体外へ排出されます。この排出こそが生理の正体なのです。
つまり生理は、卵巣や子宮といった女性の器官が、妊娠するための準備をしているという証拠でもあるのです。
2.生理はいつまでのおつき合い?40歳未満で閉経を迎えてしまうケースも
思春期の頃に始まる生理はいつまでも続くものではありません。年々卵巣の活動は低下してゆき、最終的には生理が来なくなります。
一般に、12か月以上生理が来ない状態が続くことを「閉経」といいます。閉経は平均50歳前後で迎えるとされています。しかし、実際には個人差が大変大きく、早い方ですと40歳前半で閉経を迎える方もいらっしゃいます。
●生理が来ないと妊娠が難しく…。検査してみて!
さらに、40歳未満で閉経を迎えてしまうケースもあり、これを「早発閉経」と呼びます。40歳未満の約100人に1人の割合で、この症状がみられます。
早発閉経の場合、妊娠のハードルはとても高くなり、治療も大変困難となります。自覚症状は多くはありませんが、生理不順で生理が数か月に1度しか来ないといった方は、早発閉経の可能性があります。
生理が来なくなる、閉経を迎える、ということは、基本的には妊娠ができなくなる(難しくなる)、ということです。
生理がずっとは続かないように、妊娠にもタイムリミットがあることを踏まえて、将来のライフプランを設計してみてくださいね。
また、早発閉経を少しでも早くに把握するため、生理が数か月に1度しか来ない、という方は、一度病院での検査を受けられることをおすすめします。
生理/排卵管理・妊活サポートアプリ「eggsLAB」では、初潮時期とご自身の生理日を記録することで、卵巣年齢、卵子在庫を予測することができます。病院に行くことに抵抗があるという方は、まずは一度アプリでチェックしてみるのもいいかもしれません。
3.お悩み別!生理からわかるカラダの状態
生理は痛みを伴ったり、ナプキンの取り換えが発生したり…と、どうしても煩わしく感じてしまうものです。しかし、生理の状態は、身体の状態を示すサインでもあるのです。
ここからは、よくあるお悩み別に、どのような原因が考えられ、どう対処すればいいのかについて、お伝えします。
●(1)女性を悩ませる生理痛…その原因は?
【原因】
急に襲う生理痛。この痛みが強いことを、「月経困難症」と呼び、「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」があります。
「機能性月経困難症」は、経血を排出する際に働く「プロスタグランジン」という物質が原因といわれています。この物質が子宮を過度に収縮させてしまうことで、子宮内の血液の回りが悪くなり、痛みを引き起こしてしまうのです。
一方、「器質性月経困難症」は、婦人科系の病気が原因で痛みが引き起こされます。
代表的な病気として、子宮内で良性の腫瘍が増殖する「子宮筋腫」や、本来子宮の内側に生成される子宮内膜が子宮筋という場所に生成される「子宮腺筋症」といったものがあげられます。
【対処法】
痛みが強い場合はガマンせずに痛み止めを飲みましょう。「飲むとどんどん効かなくなる…」「薬は身体にあまりよくないから…」と、服用を控える声も聞かれますが、鎮痛剤に大きな害はありませんのでご安心ください。
また、薬が効くまでに時間がかかるため、少しでも痛みを感じたら、早期に服用することをおすすめします。
薬は市販のものでも効果がありますし、もし薬が合わないと感じる場合は病院でご自身にあった薬を処方してもらいましょう。
●(2)生理の血を見て健康チェック!経血から分かる病気は?
【原因】
生理の状態は人と比べることは難しく、経血量も多いのか少ないのか、なかなかご自身では判断が難しいですよね。
経血量の差は、元々の子宮の大きさが関係しています。経血は子宮内膜がはがれ落ちたものですので、子宮が大きいと、経血量も多くなってしまうのです。
子宮の大きさは人それぞれですので、敏感になりすぎることはありません。しかし、やはり多すぎたり少なすぎたりすると、もしかしたら病気が潜んでいる可能性もあります。
毎時間のように、ナプキンを変えなければいけないほど多い場合は、「子宮筋腫」という病気かもしれません。筋腫のある部位や大きさによっては、経血量が多くなってしまうのです。
一方、経血量が少ないと感じる場合には、「多嚢胞性卵巣症候群」の可能性があります。卵巣がうまく働いておらず、排卵していない状態にあるのです。通常、排卵をきっかけに生理がおこるため、排卵していないと経血量が少なくなってしまう、または生理が来ないのです。
【対処法】
経血量が多すぎる場合も少なすぎる場合も、病気の可能性が考えられますので、迷わず一度病院を受診してください。
もし、子宮筋腫や多嚢胞性卵巣症候群の場合、不妊の原因になり得る病気ですので、早急に正確な対処が必要です。まずは、ご自身の身体の状態を正しく把握するためにも、病院で相談してみましょう。
●(3)生理周期が不安定
【原因】
生理がずっと来なかったり、短期間で来たり…といった経験はありませんか? 周期には個人差がありますが、大体25~35日、平均28日のサイクルで繰り返されています。
この日数をはずれ、24日よりも短い場合を「頻発月経」、39日よりも間があく場合を「稀発月経」と呼びます。
生理周期が短い場合も長い場合も、卵巣の働きが不十分で、排卵が正常にされていない可能性が考えられます。
また、頻発月経の場合は、妊娠に欠かせない黄体ホルモンが不足する「黄体機能不全」の可能性もあります。
【対処法】
無排卵、黄体機能不全ともに、不妊の原因になる可能性があります。まずは、ご自身の周期を把握することが大切です。生理の記録をし、ご自身がどのくらいの日数で周期を繰り返しているのかを把握するようにしてください。
また、基礎体温を測ることで、体温の上下から排卵しているかどうか推測することもできます。なるべく毎日基礎体温の計測をして、生理の記録と合わせて、排卵の状態も確認してみてくださいね。
先ほどご紹介したアプリ「eggsLAB」では、生理と基礎体温の記録をまとめてスマホで管理することもできます。ぜひ毎日の健康管理にご活用ください。
生理は痛みも量も個人差があり、ご自身では判断しにくいものです。ちょっと不安だけど大丈夫、と判断していても、もしかしたら不妊につながる病気のサインかもしれません。
また、ストレスにも大きく影響されますので、ご自身の生活習慣を整えることも重要です。生理の状態が少しでも気になる場合には、ガマンせずに病院で相談してみてくださいね。